生化学検査薬市場は多くの検査項目の普及が進み検査数が飽和状態に

2017年02月21日 08:26

 富士経済は、主に血液中の蛋白質、蛋白質の一種である酵素、電解質、金属イオン、脂質、血糖などを測定し、臓器機能異常のスクリーニング(ふるい分け)などに汎用する生化学検査と、血液中の赤血球数・白血球数・血小板数の測定や血液細胞の形態観察、血液の固まり易さなど(血液の凝固・線溶)から、貧血・多血症、炎症・腫瘍、出血・血栓症(血液疾患)などの診断や経過を観察する血液検査の国内市場を調査した。その結果を報告書「2017 臨床検査市場 No.2 生化学検査・血液検査市場/注目検査の開発動向」にまとめた。

 それによると、生化学検査薬市場は、多くの検査項目の普及が進み検査数が飽和状態にあることや、自動化学分析装置における使用検査薬・消耗品の微量化や価格訴求による差別化などにより横ばいとなっている。今後もこの傾向は続くとみられ、市場は微減に転じると予想される。

 簡易分析装置用試薬市場は、既存ユーザーに加え、新規開設・装置導入する診療所などもあり、近年は70億円前後で横ばいとなっている。今後も市場の変動は少なく、横ばいが予想される。電解質分析装置用試薬市場は、装置稼働台数の減少にともない微減となっている。今後も電解質測定装置のニーズ減少にともない市場は微減が予想される。

 血糖分析装置用試薬市場は、糖尿病患者の増加に伴いハンディタイプの装置の販売台数が増えており拡大している。今後もハンディタイプの普及に伴い市場拡大が予想される。血液ガス分析装置用試薬市場は、装置の普及が一巡したことから停滞している。成熟市場であり単価の下落によって今後は微減が予想される。

 自動化学分析装置市場は、2013年に消費税増税前の駆け込み需要により一時的に拡大、2014年にその反動で落ち込み、2015年はほぼ回復している。今後は主要メーカー各社が発売した大型機、中型機が2016年から2018年にかけて販売のピークを迎えるとみられるが、買い替えが中心であるため、それ以降市場は縮小が予想される。簡易分析装置市場は、近年撤退するメーカーもあったが、既存ユーザーの買い替えや診療所の新規開設に合わせた営業展開でこのところは年間1,200台程度の販売となっている。今後も大幅な市場拡大は期待し難いが買い替えを中心に一定の需要があると予想される。

 電解質分析装置市場は、検査室では自動化学分析装置へ、手術室では血液ガス分析装置へその機能を集約しており、電解質分析専用としての装置ニーズは減少している。今後もその傾向は変わらず市場は縮小が予想される。血糖分析装置市場は、台数ベースで年率10%以上伸びている。特にハンディタイプが大きく伸びており、SMBG(血糖自己測定装置。今回の調査対象外)からの移行も進みつつある。

 血液凝固装置市場は、買い替え需要が中心である。複数の測定法を搭載した複合機では、シェア1位、2位のメーカーが着実に実績を伸ばす一方、3位以降は実績の増減が大きい。凝固時間法専用機が2014年に各メーカーから新製品が発売され、販売台数を伸ばしている。今後も複合機上位メーカー、凝固時間法専用機メーカーの販売台数伸長により、2019年頃まで拡大が予想されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)