低消費電力化の需要により、注目の集まるパワー半導体

2012年03月12日 11:00

 小型化・低消費電力化の進む半導体。連日発表される半導体関連商品には、必ずと言っていい程低消費電力化の実現が特徴として掲げられており、新商品の備えるべき絶対の要素とも言える状況にある。そして現在、低消費電力化の切り札として、パワー半導体の活躍の場が増えているという。

 半導体と言えば、情報処理や記録などを行う集積回路というイメージが一般的であろう。これに対しパワー半導体とは、電力の供給や制御を担う半導体のこと。扱う電圧や電流が大きい一方、耐熱性等に優れているため、製品の小型化や軽量化に貢献するものとして期待されているものである。現在では、その性能が向上し、次世代パワー半導体と呼ばれるものの拡大とも相俟って、多くの企業が低消費電力商品として開発、製品化をしている。

 近時では、2月にルネサスがノートPCを省電力化する低損失のパワー半導体を発売している。ノートPCに用いられるリチウムイオン二次電池の充放電制御スイッチや、ACアダプタとのパワーマネジメントスイッチには、システム全体を動作させるための大きな電流が流れる。その為、スイッチに使用するパワー半導体により動作している時の動作抵抗を低減することができれば、システムの消費電力を低減することが可能となるのである。本製品は、この動作抵抗の低減を実現したもので、結果、低消費電力化に貢献しているのである。

 また、需要の拡大するハイブリッドカーや電気自動車でも、パワー半導体は大きな役割を担っている。ハイブリッドカーや電気自動車では、モーターを駆動する高圧の電流を車載機器用の低圧電流に変換するために、パワー半導体を採用した電圧変換機が搭載されている。その為、パワー半導体の性能が向上すれば結果的に、走行距離の伸長などに貢献することとなり、ハイブリッドカーや電気自動車の普及拡大に繋がるのものとして、注目度が高くなっているのである。

 その他、風力発電や太陽光発電システムにも搭載されているなど、今後需要拡大が見込まれる機器には総じてパワー半導体の力が必要とされている。その為、矢野経済研究所によると、2011年から2017年までの年平均成長率は8.9%、2017には市場規模が2011年の1.7倍と予測されており、半導体市場全体をけん引する分野の一つと思われる。現行材料のSiでは実現できない大幅な効率向上や小型が見込めるSiCやGaNといった次世代材料を用いた、次世代パワー半導体の製品化も進んでおり、先の矢野経済研究所の数字を裏打ちする形となっている。需要が拡大するパワー半導体の中で、次世代パワー半導体はまだ動き出したばかりの分野である。この分野で日本企業がどれだけイニシアティブを握れるか、その動向次第で、他国企業に後背を期している半導体市場の勢力図を大きく変えることができるかもしれない。