理研らが干ばつに強いイネの実証栽培に成功

2017年04月08日 09:10

 開発途上国を中心とした世界の人口増加と経済成長により2050年には現在の1.6倍以上の食料増産が必要になると言われ、農作物の安定かつ持続的な生産が喫緊の課題になっている。特に干ばつは農作物の生長や収穫量に大きく影響を及ぼし、毎年1800万トンのコメを干ばつにより損失している。そのため、干ばつ等の不良環境下でも生産性の高い作物の開発が求められている。

 これを受け、理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター機能開発研究グループの篠崎一雄グループディレクター、高橋史憲研究員、国際農林水産業研究センターの中島一雄プログラムディレクター、国際熱帯農業センターの石谷学グループリーダー、筑波大学の草野都教授らの国際共同研究グループは、シロイヌナズナのガラクチノール合成酵素遺伝子(AtGolS2)を現在普及している品種のイネに導入し、干ばつ耐性が向上した遺伝子組換えイネを開発した。

 理研は、植物が乾燥耐性を獲得するうえでラフィノース属オリゴ糖の基質であるガラクチノールが重要な物質であることを、2002年に報告している。AtGolS2を過剰発現させたシロイヌナズナは、ガラクチノールを有意に蓄積し、乾燥条件でも長く生き抜きくという。

 国際共同研究グループは、AtGolS2を導入した遺伝子組換えイネを開発し、コロンビアにある国際熱帯農業センターの乾燥圃場で試験を行った。その結果、この遺伝子組換えイネは原品種と比較して、最大で約70倍という多量のガラクチノールを蓄積することを確認した。さらに、複数年に渡る圃場試験の結果、30日間を超える無降雨期間という厳しい干ばつ条件下でも単位面積当たりの収量は最大で157%増加し、高い収量を維持できることを実証した。

 今後は、開発したイネを用いてアフリカや南米において大規模な現地栽培試験を行い、干ばつ条件でも安定して2~3割の増収を目指す。また、モデル植物として広く普及しているシロイヌナズナから単離できるAtGolS2の導入は、他の地域の主要イネ品種においても同様の効果が発揮されると期待できるとしている。(編集担当:慶尾六郎)