脂肪萎縮性糖尿病は先天的あるいはAIDSの治療薬などによって後天的に発症する重症かつ難治性の糖尿病の一種。通常の糖尿病治療では改善が難しく、厚生労働省から難病にも指定されている。脂肪萎縮症は本来脂肪組織から分泌される善玉アディポサイトカインであるレプチンなどが減少することにより、脂肪肝などの著明な内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、重症糖尿病を呈します。皮下注射によるレプチン補充療法が有効な治療法だが、高価であり、また皮下脂肪がないことによる注射時痛で治療継続が困難な場合がある。
東北大学病院糖尿病代謝科の今井淳太講師、川名洋平医師、片桐秀樹教授らのグループは、糖尿病の内服薬である SGLT2阻害薬によって難病に指定されている脂肪萎縮性糖尿病が著明に改善したと報告した。この報告は脂肪萎縮性糖尿病に対する SGLT2 阻害薬の効果を示した世界初の報告で、疾患に対する有望な新しい治療選択肢を提示するものとして期待されるという。
先天性全身性脂肪萎縮症は、脂肪萎縮症の中でも特に重症な糖尿病を呈する。長期にわたってコントロール不良な糖尿病が持続していた先天性全身性脂肪萎縮症に対して、SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジンを投与したところ、脂肪肝が減少し、糖尿病、インスリン抵抗性が著明に改善した。SGLT2阻害薬は脂肪燃焼による内臓脂肪減少効果が報告されており、同例でもそのことがインスリン抵抗性、糖尿病の改善につながったと考えられるという。通常診療で用いられる保険適応となっている治療であり、比較的安価に行うことができ、また、内服薬であることから注射時痛もない。これらのことから同治療は、脂肪萎縮性糖尿病に対して、病態改善メカニズム、医療経済、治療アドヒアランスの各面からきわめて有用であり、有望な治療選択肢となることが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)