東宝配給の「君の名は。」はアニメ映画の興行収入歴代2位となる大ヒット作。パンフレットやキャラクターグッズも売れ、映像事業は前年度比38.5パーセント増を達成した。アニメ映画が邦画の動員数を高める傾向は当分、続きそうだ。
東宝<9602>は2017年2月期の決算を発表、営業収入は約2335.8億円で前期比1.8パーセント増、営業利益は約502.2億円で前期比23.4パーセント増となった。営業利益は過去最高となる見込み。
主力となる映画事業の収入は1545.7億円で前期比約2.1パーセント増に留まっているが営業利益は前期比約337.7億円で29.5パーセント増まで伸びている。東宝が自社製作・配給した「シン・ゴジラ」を始め、「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」や「映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」など定番アニメシリーズが好調なことも増益の要因だが、もっとも寄与したのが「君の名は。」だ。
16年8月に上映開始された「君の名は。」は公開後2日間で約7.7億円の興行収入を上げ、17年4月16日の時点で約248.9億円に達している。これは日本で公開された映画の歴代ランキングで3位の「アナと雪の女王」に次ぐ順位。アニメ映画だけを見れば01年に公開され、約308億円の興行収入を上げた「千と千尋の神隠し」に次いで第2位となる。
「君の名は。」の興行成績は別格だが、2016年の邦画興行収入ランキングには東映配給の「ONE PIECE FILM GOLD」なども入っており、トップ10のうち6本がアニメとなっている。洋画のアニメまで含めると興行収入20億円を超える作品が12本あった。
17年も5月公開予定の「劇場版FAIRY TAIL-DRAGON CRY-」や7月公開予定の「メアリと魔女の花」など話題のアニメ作が控えており、日本の映画配給会社にとってアニメは確実に稼げるドル箱的存在といえる。
またテレビ放送でもアニメ作品は新作が次々と公開されているが、アニメ業界は慢性的な人材不足が続いている。アニメーションの持続的発展を目的とした一般財団法人の日本動画協会は文化庁委託事業として若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2018」などに取り組んでおり、慢性的人材不足の解消と環境改善を図っている。今後、劇場版を含むアニメ作品が良質を保つためには人材不足の解消がカギとなる。(編集担当:久保田雄城)