国内の危機管理ソリューション市場が前年度比5.8%増。災害に対する意識継続

2017年05月07日 16:08

 2011年に発生した東日本大震災から6年。被災地の復興は未だに続いている。それ以降も日本では2016年4月に熊本地震が発生したり、鳥取地震や茨城地震など、大惨事になりかねなかった地震も数多く発生している。また、政府が死者33万人規模を予測している南海トラフ地震の発生も心配される昨今、地震大国といわれる日本で暮らす我々にとって、平時からの地震対策は生き残るための必須事項といえるだろう。

 4月18日に矢野経済研究所が発表した、国内の危機管理ソリューション市場に関する調査結果によると、2016年度の国内の危機管理ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比5.8%増の8967億円を見込んでいる。熊本地震の影響で策定済みのBCP(事業継続計画)を見直す動きやBCP関連のセミナーや訓練など需要が増加したこと、DR(災害復旧)ソリューション市場においては、全般的にサービス単価が低下傾向にあるものの、クラウド型のサービスの利用拡大が進んだことで導入企業の裾野が拡がったこと、さらに防災ソリューション市場においても、政府や地方自治体で、導入済みの各システム・サービスの高度化、高機能化が継続的に進められていることなどが売上高増加につながったようだ。また、災害以外では情報セキュリティソリューション市場で、2020年開催予定の東京五輪に向けて、サイバーテロ攻撃への情報セキュリティ対策の導入を促進する機運が高まったことなども大きい。

 中でも防災ソリューションについては、一般家庭でも関心の高い分野だろう。非常災害時の災害情報の収集や伝達を行う「防災行政無線システム」や、消防指令業務を支える「消防指令システム」、災害対策業務の実行を支援する「総合防災システム」など、いざという時に国や自治体のシステムがどれだけ有効に働くかで、救われる人命も増えるだろう。

 国や自治体だけに頼るのではなく、民間レベルでの災害対策も欠かせない。

 とくに震災発生時には、住宅がどれだけ揺れに強いかということが生死を分けることにもなりかねない。また、地震発生後も、大地震の場合はとくに、その後の余震にも警戒が必要だ。マグニチュード9を記録した東日本大震災などの規模になると、余震の規模も大きく、数十年にわたって続く可能性もあるといわれている。本震で耐えても、その後に住み続けることができなければ、生活に大きな負担となってしまう。

 そんな中、住友理工株式会社が東海地方の工務店や関係者約70名を集め、「住友理工 地震に強い家づくりセミナー」を開催。第1部では、日経ホームビルダー編集長(当時)の桑原豊氏による講演が行われ、第2部では、住友理工化工品事業部参事の小谷宗男氏が「制震の仕組み」についての講演を行ったほか、同事業部免制振デバイス技術部の野村武史部長からは木造住宅用制震システム「TRC ダンパー」の仕組みや実大実験結果についての説明が行われた。

 地震時に木造住宅の損傷を低減する制震装置「TRC ダンパー」は、新築だけでなくリフォームにも対応していることから、集まった工務店や関係者の関心も高く、野村部長の説明を熱心に聞き入る姿が見られた。同製品は、自動車用防振ゴムなどでトップシェアを誇る住友理工が開発した特殊粘弾性ゴムを本体に内蔵したもので、地震エネルギーを熱エネルギーに瞬時に変換・吸収し、住宅の揺れを抑えることができる。しかも、経年変化が少なく長期にわたって性能を維持できるほか、余震や繰り返しの地震にも高い効果を発揮するという。

 防災対策といえば、一般家庭では防災グッズを買い揃えたり、避難場所を確認したりしただけで満足していることも多いのではないだろうか。確かにそれも重要な災害対策であることには間違いない。しかし、家の強度や構造にも今一度、意識をめぐらせてみてはいかがだろう。新築時だけでなく、リフォーム時、もしくは災害対策としてのリフォームを考えることは、もしもの時の家族の命を守ることに直結する。リフォーム代金は決して安くはないが、命の値段にはかえられないのだから。(編集担当:松田渡)