熊本地震から間もなく1年が経とうとしている。2016年4月14日に発生した熊本地震はM6.5、最大震度7を記録し、それ以降も、熊本や大分で余震が続いている。気象庁の発表では、2016年12月12日から17年3月18日の間だけでも68回もの地震が確認されており、最大規模はM3.9 、最大震度4となっている。また、東日本大震災のあった福島県沖でも、未だに余震が続いており、上記同期間で65回、しかも最大規模は熊本よりも大きいM5.8、最大震度5弱を記録している。もちろん、地震の心配は熊本や東北地方だけの話ではない。地震大国といわれる日本に住んでいる限り、いつ地震が発生して、被災してしまうかわからない。決して対岸の火事ではないのだ。
地震で怖いのは、揺れによる倒壊や崩落などももちろんだが、火災や水害、有毒ガスなどの漏えいと拡散、爆発、土砂崩れ、土石流、津波などの二次災害だ。地震の規模や発生地域によっても対処法や対策は異なるが、平時に被災状況をできるだけ具体的に想定し、備えておくことで、減災することは不可能ではない。
消防庁の調べでは、地震による二次災害で最も多いのが火災だ。東日本大震災における火事災害の出火原因の約半数が、電気関連製品の配線など、電気関連製品からの出火だったという。
これを防ぐものとして普及が急がれているのが感震センサだ。感震センサとは、ブレーカーやコンセントなどの分電盤に設置され、地震の強い揺れを感じると主幹ブレーカーを切ることで室内への通電をストップするものだ。倒れた電気機器類や傷んだコードなどに再び電気が通ることで起こる通電火災を防ぐことができる。
日本政府も、南海トラフ地震と首都直下地震に備えた減災基本計画の中で木造住宅密集地での感震ブレーカーの設置率を10年以内に25%に増やすとしており、2015年には感震ブレーカーに関するガイドラインを策定。パナソニック、日東工業、河村電機産業、テンパール工業などの各ブレーカーメーカーも、このガイドラインに即した製品開発に力を入れ始めている。例えば、パナソニックの感震ブレーカー搭載分電盤「地震あんしん ばん」は、震度5以上を検知するとブザー音で警告し、主幹ブレーカーを切断してくれる。
また、電子部品大手のロームも、分電盤や家電、給湯器など向けに、3軸加速度センサで計測した地震波で地震レベルを判断し、検出信号を出力する業界最小・高精度な感震センサモジュール「BW9577」を発表した。同社は、地震の揺れによって建物にどの程度被害が生じるかを表す数値であるSI値を用いて、独自の演算アルゴリズムを新たに開発。信号処理方法、計算パラメータ、計算シーケンスを最適化することで、高精度な感震判定が可能にし、地震と人為的な振動を区別する為の誤検知防止機能を搭載しているという。これにより、人為的な衝突震動を感知した時にはブレーカーは落とさず、地震発生時には的確に分電盤の制御を行うことができるという。さらに小型薄型化を実現し、機器への取り込みが容易になったということも、普及する上での大きなメリットとなることであろう。
地震は天災だが、火災は人災ともいわれる。自分の家や財産を守るだけでなく、隣家や周辺地域へ被害を及ぼさないためにも、個人でも最新の技術を知って、もしもの時に備えておきたいものだ。(編集担当:石井絢子)