九大が膵臓がん幹細胞の生存・転移に重要なしくみを攻撃する化合物を発見

2017年06月17日 09:16

 膵臓がんは、現在、最も治療の困難ながんの一つと言われており、その5年生存率はわずか5%程度と非常に低いのが現状である。近年、その原因としてがん幹細胞と呼ばれる細胞集団の機能が注目されているが、がん幹細胞機能を阻害する有効な手法はいまだ確立されていない。

 九州大学大学院農学研究院の立花宏文主幹教授らの研究グループは、東京工業大学田中浩士准教授の研究グループと共同で、膵臓がん幹細胞の機能を阻害する化合物を発見した。

 研究グループは先行研究において、cGMPという分子が膵臓がんのがん幹細胞機能に重要な役割を担っていることを見出した。そこで、がん細胞にcGMP産生を誘導する緑茶の主要成分EGCGと、cGMPを分解する酵素として知られるPDE3阻害剤を膵臓がん細胞に作用させたところ、がん幹細胞機能の指標であるスフェロイド形成能が抑制されたという。

 また、膵臓がん移植マウスモデルにおいて腫瘍成長ならびに肝臓への転移が劇的に抑制されることを見出した。

 さらに、EGCG誘導体の中からスフェロイド形成能阻害活性に基づくスクリーニングを行い、膵臓がん幹細胞機能を強力に阻害する化合物を発見した。

 この研究により、緑茶カテキンEGCGの作用増強が膵臓がん幹細胞機能の阻害に有効である可能性が示された。さらに、研究で発見した化合物は、膵臓がんに対する新たな治療薬となることが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)