AI(人工知能)を採用業務にも活用するという動きが広がっている。従来、人間が行ってきた書類選考や1次面接をAIが代行することで、採用に伴う時間と労力を削減し、さらには採用の精度を高めることが期待されている。NECが2015年よりAIによる採用システムを構築するほか、リクルートホールディングスもAIなどによる人事・採用テクノロジー(HRテック)に注目し、同年に人工知能研究所を立ち上げている。AIによる採用システムの導入企業については、最近ソフトバンクグループ傘下のソフトバンクが、新卒採用にIBMの「ワトソン」の活用を発表している。
AIはこれまで蓄積された採用データを学習し、企業が求める人材の傾向を分析。採用の際に提出された履歴書や採用試験、面接データを分析しマッチングを行う。NECのAIシステム「RAPID機械学習」では、約2000人分の履歴書データと、採用試験の合否判定結果をシステムに入力。AIが企業の採用基準を学習して自動的に適切な人材を選抜できるようになる。履歴書・エントリーシートなどによる判定を事前に実施することで、面接する学生の数をこれまでの半分に減らせるとのこと。さらには、リクルートホールディングスのシステムでは、SPIデータや面接時の受け答えのテキストデータから、企業の求める人材を学習し、人材の入社5年後の活躍まで予測できるという。
適性を正確に判定し、仕事のマッチングを行うといったAIの使い方も本格化している。新卒採用サイト「OfferBox」では、現役の社員へのアンケートにより「協調性」や「困難に立ち向かう力」などを数値化。企業ごとに理想の人物像を作り上げる。それに類似する傾向を持つ学生をAIで抽出し企業とマッチングを行う。AIが社風に合った学生を選抜するため、採用後の早期退職が防止できる効果があるとのこと。
面接官の役割を実際にAIが担うケースも出てきている。タレントアンドアセスメントの提供する採用サービスでは、AIによる資質判定を行うほか、「Pepper」が面接官となって採用業務が進められる。AIが人間の代わりに採用面接をすることで、面接官の思い込みや評価のバラつきが改善できる。
企業で活躍できる人材の採用は、企業側だけでなく、就職希望者にとっても資質にマッチした職場を選択しやすい点でメリットが大きいと考えられ、今後さらにAIによる採用システムの導入が進むと考えられる。(編集担当:久保田雄城)