阪大とマンダムが汗腺の三次元構造の可視化に成功 次世代型制汗剤の開発に期待

2017年06月26日 06:24

 温暖化や超高齢社会を背景に、多汗症や熱中症の患者の増加が社会的問題となっている。障害を起こした発汗機能を改善するためには、発汗時に収縮を起こす汗腺の構造を理解する必要がある。汗腺は分泌部と導管部で構成された1本の管状の外分泌腺で、分泌部で放出された汗が導管部を通って皮膚表面に排出される。汗腺の末端の分泌部と一部の導管部は、糸くずが絡まるようにコイル状に複雑に折りたたまれ、このコイル領域に存在する汗腺分泌部の一番外側の層を筋上皮細胞が取り囲み、発汗時に収縮するとされている。しかし、汗腺は複雑な構造を持つため、従来の解析では解明できなかった。

 大阪大学大学院薬学研究科 先端化粧品科学(マンダム<4917>)共同研究講座 の岡田文裕招へい教授、蛋白質研究所寄附研究部門の関口清俊教授、 大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学講座の片山一朗教授の研究グループは、発汗時における汗腺収縮の解明につながるヒト汗腺の三次元構造を可視化することに、世界で初めて成功した。

 今回、研究グループは、ホールマウント免疫染色法を用いて、ヒト汗腺の三次元構造の可視化に成功した。まず、汗腺の複雑なコイル構造を理解するために、ヒト汗腺を構成しているパーツごとに識別できるマーカーを選定した。それらのマーカーを用いて、三次元的に汗腺を可視化したところ、コイル構造内の分泌腺は、チューブ自体がタオルを絞る様に捻れた立体構造をとっていた。その分泌腺を覆う筋上皮細胞は、分泌腺のチューブの捻じれ方向に沿って並んでいた。さらに、発汗刺激を行うために必要な神経も三次元的に可視化したところ、神経は分泌腺の筋上皮細胞のみを取り巻いていた。このような特徴的な三次元構造は他の分泌腺(乳腺や唾液腺)とは全く異なっており、独自の分泌機構で汗を排出していることが予想された。

 この研究により、発汗収縮に重要なヒト汗腺の三次元構造がより詳細に解明された。発汗障害の治療時には発汗収縮を解明することが不可欠。今後の研究で汗腺の収縮の基礎的なメカニズムがさらに解明されれば、発汗に関連する病気(熱中症や多汗症)の解明や治療につながると期待される。さらには、これまでは汗腺にフタをする機能が中心であった制汗剤の領域で、汗腺に直接作用することにより、汗の量を制御することができる新たな機能をもった制汗剤の提案の可能性が示唆されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)