Facebookの人工知能(AI)研究チーム「FAIR(Facebook's Artificial Intelligence Researchers)」は、人間やAIボットと交渉ができるAIボット「ダイアログエージェント」を開発し、論文とソースコードを公開した。従来のボットは、レストランの予約や指定したものを特定のECサイトで購入するといった単純なタスクをこなすことしかできなかった。
Facebookの人工知能(AI)研究チーム「FAIR(Facebook’s Artificial Intelligence Researchers)」は、人間やAIボットと交渉ができるAIボット「ダイアログエージェント」を開発し、論文とソースコードを公開した。従来のボットは、レストランの予約や指定したものを特定のECサイトで購入するといった単純なタスクをこなすことしかできなかった。
異なる目的を持つ人間どうしが話し合い、妥協点を見出す「交渉」には複雑な思考と判断スキルを要する。日常生活は、より安い値段で買い物をしたり、子どもに苦手な野菜を食べさせたり、といった交渉の連続だ。ダイアログエージェントは、物事の価値を評価し、交渉に関わるメンバーにとってどのくらい重要なのかを推測できる能力を備えており、常識的な判断や結論を探りながら一貫した交渉を行える。また、たとえ最適な解ではなくても、メンバーにとってより重要な価値を持つ結論が提示された場合は妥協もする。ダイアログエージェントの性能評価のためにオンラインで人間と交渉させたところ、ほとんどの人は相手がAIボットだと気づかなかったとのこと。
ダイアログエージェントは、自然に会話のできるAIボットの開発するうえでの重要な技術となる。FAIRは5月にはオープンソース・プラットフォーム「ParlAI(パーレイ)」を公開し、AIの会話能力向上を推し進めている。AIが、人間に対応して多様で複雑な会話をするためには、多くの関連タスクに習熟する必要があり、同プラットフォームでは一度に複数のタスクにわたってダイアログモデルをトレーニングしテストすることを目的とする。今回のダイアログエージェントやパーレイを公開し、世界中の開発者にトレーニングを促すことで、FacebookのAIアシスタント「M」をはじめとするAIボットの、会話精度の向上を促進する狙いがあるとみられる。近い将来、「やり取りしている相手が実はAIボットだった」ということが頻繁に起こるようになるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)