東北大がアルツハイマー病の原因遺伝子を推定

2017年07月04日 07:27

高齢化に伴いアルツハイマー病患者が増加しており、社会問題となっている。様々な病気の原因として遺伝子の数の変化が注目されており、アルツハイマー病についても数の変化が原因となる遺伝子群が報告されているが、本当に原因となる遺伝子の特定は困難であった。

 東北大学大学院生命科学研究科の牧野能士准教授らのグループは、アルツハイマー病患者に特有のゲノム領域に含まれるオオノログという特殊な遺伝子に着目することで病気の原因となる遺伝子を多数推定した。

 近年、病気の遺伝的要因としてヒトゲノム中におけるコピー数多型(CNV)が注目されている。CNV 領域中に遺伝子が存在すると遺伝子量が変化するため、遺伝子量変化に弱い遺伝子を含む CNV は病気の原因となる。全ゲノム重複に由来する遺伝子群”オオノログ”は遺伝子量変化に弱く、オオノログを含む CNV は病気との関連が強いことが分かっていた。このことから、病気の原因となる CNV 中のオオノログに着目した原因遺伝子の推定は有効であると考えられる。しかし、多くの CNV 領域は複数の遺伝子を含むため、オオノログ情報のみからこの方法の有効性を確かめることは困難だった。

 研究では、遺伝子量の変化が発症の原因の一つと考えられているアルツハイマー病患者で報告された CNV 中の遺伝子群を対象に遺伝子機能や遺伝子発現量を調査し、オオノログに注目した原因遺伝子推定の有効性を検証した。

 解析の結果、オオノログは既知アルツハイマー病原因遺伝子群と同様、遺伝子破壊により神経系に異常をきたす遺伝子が多く、脳組織での平均発現量が他組織よりも高いことがわかった。以上の結果は、遺伝子量の変化が関与する病気において、オオノログを用いた原因遺伝子の推定が有効であることを示している。統合失調症などアルツハイマー症以外にも遺伝子量変化が原因となる病気が報告されており、同手法の他の病気への応用が期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)