京大がiPS細胞から血液脳関門モデルの作製に成功

2017年03月03日 07:59

 血液脳関門は、脳に特異的な血管内皮細胞(脳血管内皮細胞)が、周皮細胞・ニューロン・アストロサイトに囲まれた構造をしており、脳血管内皮細胞どうしが密着結合することで、分子が中枢神経系に拡散するのを制限するバリア機能を果たしている。また、脳血管内皮細胞は、糖やアミノ酸などの栄養分を細胞膜へ透過させるための輸送体に富んでおり、栄養分が効率的に血液から脳に取り込めるようになっている。また、物質を排出するための輸送体も多く存在し、それにより毒素や病原体が脳に入るのを阻止し、脳を守る役割も果たしている。

 一方で、そのバリア機能により中枢神経系疾患をターゲットとした治療候補薬も脳内に到達することが難しいために、開発を断念せざるを得ないことが多く、創薬において大きな課題となっている。また、脳血液関門の障害がアルツハイマー病やパーキンソン病を含む神経変性疾患と関連していることが知られている。それらの病気のメカニズムの解明や創薬研究に向けて、血液脳関門のモデルの作製が求められていた。

 これまで動物由来の血液脳関門モデルが作製されていますが、ヒトの血液脳関門の特性や機能とは異なる。そこで、ヒト血液脳関門モデルの作製を目指して、がんやてんかん患者の脳から毛細血管を単離したり、不死化した毛細血管を使ったりするなどの試みがあったが、十分な量や機能を示し、再現性の高い血液脳関門モデルの作製に至っていなかった。

 今回、京都大学CiRA増殖分化機構研究部門の山水康平特定拠点助教、京都大学CiRA同部門の山下潤教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から血液脳関門のモデルを作製することに初めて成功した。

 研究グループは、血液脳関門を構成する、血管内皮細胞・周皮細胞・ニューロン・アストロサイトという4種の細胞をヒトiPS細胞からそれぞれ分化誘導し、共培養した。すると、血管内皮細胞は、脳血管内皮細胞に特徴的な栄養輸送体や排泄輸送体を強く発現し、また、互いに密着結合することで強いバリア機能を示した。このように血管内皮細胞が脳血管内皮細胞の特性を獲得するためのメカニズムを調べてみると、ニューロンにおけるDll1遺伝子の発現によりNotchシグナル伝達系が活性化されることが必須であることがわかった。

 iPS細胞から作製した脳血管内皮細胞を、iPS細胞由来アストロサイトと共培養することで、体内の血液脳関門と同様の薬物の透過性を示す血液脳関門モデルを作製することに成功した。今後、このモデルを用いることで、血液脳関門の機能やアルツハイマー病などの神経変性疾患と脳血管の関連についてのさらなる理解や薬の開発に役立つことが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)