日本の気候や風土に合うと言われ、人気も高い木造住宅だが、外壁をどのような素材や色にするかの選択も、住まい手を悩ますものだ。
住宅の外壁と言ってもその種類や特徴も様々。一般的によく知られているサイディングはセメント質と繊維質を主原料とし、様々な加工に適していることから、最もポピュラーで安価な素材だ。また、モルタルに樹脂系の素材などを塗装した外壁も多く採用されている。そして、いわゆる焼き物として知られる陶磁器製の”タイル”などをはじめとする陶製の外壁も、最近では脚光を浴びている。
日本でも古来より様々な製法で親しまれてきた焼き物。縄文文化でも使用された土器、備前焼などに代表される?器、粘土に釉薬を施し焼かれた陶器、石粉に粘土などを混ぜた陶石を原料とし、私たちの日常でも食器として使われる頻度の高い磁器など、実は種類も多い。外壁材としての陶製素材は「タイル外壁」として知られるように、耐候性、耐久性、耐火性に優れている。反面、導入コストの高さから住宅の価格を気にするユーザーは他素材を選択するケースも少なくないが、最近ではメンテナンスフリーとも言われるほどランニングコストがかからず、寿命が長いことから、人気が高まってきている。
一般的に「タイル外壁」として住宅の内外装に使用されるのは磁器質や?器質のものが多く、LIXILのカンパニー、INAXやTOTOなどの住宅建材メーカーもブランド力を活かした商品に力を入れているが、住宅大手の積水ハウスが同社の木造住宅「シャーウッド」用に開発した『ベルバーン』は陶器の良さを味わえる、他には無い個性的な陶製外壁として高い注目を集めている。
この『ベルバーン』は陶製外壁の特長でもある、耐候性・耐火性・耐久性はもちろん備えているが、「中空押し出し成形」方式による製造で、タイルにはない大判サイズ(1990ミリ×320ミリ)を実現している。さらに、軽量化を図ったことで「タイル外壁」に比べ、施工性・耐震性・品質安定性が高く、コストパフォーマンスでも優位。そして “陶器”ならではの土の温かみや自然な風合い、光と影が演出する様々な表情など、日本の伝統工芸の味わいを堪能できることも人気の要因として加わる。
だが、オンリーワンである匠の技を表現した微妙に異なる色合いと、高い品質を工業生産レベルで実現していることも、同社の技術レベルの高さを証明するものとして見逃せない。
同商品は当初、黒崎播磨による外注製造であったが、事業譲渡により2月14日から自社の静岡工場に製造ラインを立ち上げ、従来比2.5倍となる月間最大5万平方メートル(住宅約350棟分)の製造を可能とした。同社によると「歩留まり率は85%まで上昇し、またオートメーション化による24時間稼動となったことで、生産コストは大幅に削減された」(同社広報部)としている。この新製造ラインは同社が目論む木造住宅「シャーウッド」事業の強化・拡大への切り札として期待されている。
木造住宅と陶器の外壁。どちらも日本の風土にあった材料が使われているが、そこには住まい手に素材の温かみを与えてくれるという、日本のものづくりの息吹が感じられる。