トヨタ自動車は7月6日、新しい北米本社を稼働させた。北米事業体であるToyota Motor North America(TMNA)が、米国テキサス州プレイノ市において、北米新本社屋約10億ドル(1100億円)を投じ、全米に分散していた販売、製造、金融、コーポレートの4つの統括機能を集約した。
1000人の新規採用を含め、年内に合計4000人が同じ敷地に集結する。トヨタが北米事業を展開して60年がたち、販売台数がトヨタ全体の3割まで高まっており、現地での意思決定を早める狙いがある。
トヨタが北米で事業をスタートさせたのは1957年。日本で生産したクラウンを輸入販売する子会社をカリフォルニア州に設立したのが始まりだ。その後、販売拡大とともにカリフォルニア州に金融、ニューヨーク市に北米全体の運営部門、ケンタッキー州に研究開発・製造の子会社を設けたことで、主な機能が4つに分散していた。
だが、自動車業界はZEV拡大など環境規制強化への対応やIT、AIの導入が必至だ。北米トヨタの販売台数は260万台を超えて組織も拡大し、新しい情報の共有や運営体制の構築が課題となっていた。
そのためTMNAは2014年4月、北米の製造、販売、金融などの本社機能の拠点一元化などを通じて各機能間の一層の連携を推し進める「北米ワントヨタ」活動を公表。それ以降、プレイノ市内の100エーカーの敷地に新本社屋を建設してきた。同時に、カリフォルニア州やケンタッキー州などから、数千名の従業員やその家族が、テキサス州北部への転居を進めてきた。建設がほぼ完了した今年の春に従業員の異動を開始、以降も週に約200名のペースで、年内にかけて段階的に異動を進めていく予定。
北米本部長を務めるジム・レンツ専務役員は、「プレイノの北米新本社設立は、トヨタの60年に亘る米国事業における大変重要な一歩である。4つの米国事業体の従業員が一つの拠点で共に働くことで、顧客を第一に考え将来のモビリティを牽引しつつ、これまで以上に連携やイノベーションを生み出し、意思決定を加速できる」と述べた。
新本社屋では、従業員が日々連携を深めたいと思うような場を提供すべく、カフェテリアやジム、会議室を備えているほか、中央の広大な中庭スペースを囲むように7棟のビルを配置。環境保護にも配慮し、雨水を活用した灌漑設備や、2万枚以上のソーラーパネルなどを設置している。太陽光発電で賄えない使用電力については州内の風力発電による電力を調達することで、使用電力の全てを再生可能エネルギーで賄う予定。「50年先を見据えた設計」だという。(編集担当:吉田恒)