資料示せぬ答弁、説得力欠き、疑念深まる

2017年07月22日 11:18

画・内部告発者保護 法改正検討も課題多い

客観的資料を示した国会答弁を準備し、国民の疑念に対する説明責任をきっちり果たしていただきたい(画像はイメージです)

 学校法人加計学園(岡山市)の獣医学部新設が国家戦略特区で正式決定する約2か月前の昨年11月17日に特区担当の山本幸三地方創生担当大臣が秘書官とともに日本獣医師会を訪ね、蔵内勇夫会長ら獣医師会側の4人と46分にわたり意見交換していた。

その際の「意見交換概要(抜粋)」が公になっている。この概要だと山本大臣が「加計学園」の名をあげ、財政面にまで踏み込み、新設を伝えたことは明らかだ。

 意見交換概要から、蔵内会長は「何とか(山本幸三氏に)大臣になって頂きたいと思ってやってきたが、獣医学部新設を決断する役となられた」と全く期待していた意図に反する立場になったことに落胆している様子がうかがえる。

 蔵内会長は「今、大学を新設することは余りにも流れと逆行する。新設には反対である。我々の考え方を取りまとめ文書にするので、特区の先生方にも読んでいただきたい」と強く反対している様子が浮き彫りになっている。

 岩盤規制に風穴をあけたい総理官邸・内閣府側と「獣医師の数は足りている」と断言し「特区でやれというのはいいが、その後、業界がどうなるのか、分析してほしい」と新設に反対する獣医師会の対立が、ここでも浮き彫りになっていた。

 山本大臣は、これまでにも、獣医学部新設の条件に「広域的に」「限定」との文言を入れるように「自身が指示した」と語るなど、信憑性に疑義のある答弁をしているが、客観的な資料を提示した説得力のある答弁は一切行っていない。一方で、疑念を深める資料は次々、他から提示されている。

 獣医師会側の議事録では、山本大臣は意見交換で「誠に申し訳ないが、獣医学部を新設することになった。財政的に大丈夫か、待ったをかけていたが、今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった。実験動物学分野の獣医師は不足しているので、これに重点を置く。四国は感染症に係る水際対策ができていなかったので新設することになった」旨を発言したと記されている。

 これに山本大臣は「獣医師会の思い込みが入った内容で、正確ではない」と反論し、内閣府担当者も民進党の20日のヒアリングで「獣医師会側の受け止めをまとめたもの」「大臣は当時、『京都もありうる』とはっきり発言したことは記憶している。『加計学園』についても、特に言わないように気を付けていたということであり、正確ではない」と山本大臣の発言に沿う発言をした。

 ところが、この内閣府担当者も、発言を裏付ける内閣府側のメモや議事録は残っていないと、客観的資料を示すことなく「口頭」のみで逃げているとしか思えない姿勢をみせている。

 24日の衆院予算委員会(閉会中審査)では安倍総理も出席し、「総理が言えないので、私が代わって言う」と発言したとされる和泉洋人総理補佐官と、そのように言われたと明言した前川喜平・前文部科学事務次官の参考人招致が決まっているが、薮内日本獣医師会会長の参考人招致も実現すべきだろう。

 安倍内閣では「ウソをつく閣僚が二人(山本大臣、稲田朋美防衛大臣)いる」と言われないためにも、客観的資料を示した国会答弁を準備し、国民の疑念に対する説明責任をきっちり果たしてもらいたい。民進党調査チームのヒアリング内容を聞いていると「加計学園ありき」で進んだ疑いがより深まったと言わざるを得ない。言葉でなく、客観的資料がついてこそ、説得力が出てくるというものだ。山本大臣の答弁をきいていると、真実を語っているのか、疑問符がいっぱいついてくる。(編集担当:森高龍二)