ビッグ5の及ぼす影響が最も大きいとみられる米国のGDP成長は停滞しており、トップ5に入る企業については10年以上の入れ替わりがない状態だ。ビッグ5は競合しないプラットフォームを持っており、事実上寡占状態にある。そして、今後も5社すべてが巨額の利益を上げ続けると予想されている。
AIの登場を待つまでもなく、デジタルエコノミーが産業を変革し、市場や人々の労働形態にも大きく影響を与えている。オンラインショッピングは数十万人規模で小売り関連従事者の職を奪っているし、反対にUberなど既存のサービス以外で新たな職を得た人も多い。テスラの時価総額はすでにGMや日産を抜いており、参入障壁の低さや利益率の高さから、テクノロジー企業の隆盛は激しいと考えられている。
実際、テクノロジー企業のビッグ5(Apple、Alphabet、Amazon、Facebook、Microsoft)は好調で、Googleファイナンスのデータによれば7月20日、時価総額合計は初めて3兆ドルを突破した。ただし、これら企業の好調とは裏腹に、ビッグ5の及ぼす影響が最も大きいとみられる米国のGDP成長は停滞しており、トップ5に入る企業については10年以上の入れ替わりがない状態だ。ビッグ5は競合しないプラットフォームを持っており、事実上寡占状態にある。そして、今後も5社すべてが巨額の利益を上げ続けると予想されている。
一見すると新参テクノロジー企業にとって絶望的な状況にも映るが、スタートアップにチャンスがないわけではなく、特定の分野においてはビッグ5と勝負することが可能だ。マサチューセッツ工科大学(MIT)発のスタートアップ2社は、次世代AI開発においてそのことを示してくれている。
現在のAI開発では、パーソナルアシスタントへ注力する機運があり、Apple(Siri)、Google(Google Assistant)、Amazon(Alexa)、Facebook(M)、Microsoft(Cortana)の各社が、最先端技術を投入している。参入の隙がないようにみえるパーソナルアシスタント市場だが、次世代AIの開発としてMIT発のスタートアップ2社が、ビッグ5にない技術を開発し期待が集まっている。1社目のJibo(ジーボ)はファミリーロボットの開発を手掛ける。ファミリーロボットに音声認識、感情認識、機械学習、自然言語処理、感情表現ディスプレー、動作などの最先端技術を組み込み、人の感情や会話、周囲の出来事を把握した上でのコミュニケーションを実現している。2社目のAffectiva(アフェクティバ)は独自の感情認識技術を組み込んだソフトウエアを開発。これまで蓄積した世界75カ国、500万人、700億件の表情データを基に機械学習させてデータベース化。パソコンやスマートフォンで撮った画像の顔の表情からさまざまな感情を読み取る。これにより、ユーザーの感情に基づいて提供サービス内容を変えるような設計が可能となる。こうした新しい技術が出てくることで突然市場の様相が一変する可能性がある。(編集担当:久保田雄城)