さらばクラウン・タクシー。2017年末、日本のタクシーが大きく変わる

2017年08月05日 07:09

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トヨタのタクシー専用「クラウン・コンフォート」生産終了を受けて、2013年の東京モーターショーで展示されたトヨタ「JPN TAXI Concept」にスイッチするのか?

 日本の街を走っている数々のタクシー。その姿が、この先数年、早ければ2020年の東京オリンピック&パラリンピックが開催されているころには、大きく変わる。

■22年間生産したクラウン・コンフォート生産集結

 現在、東京などでタクシーとして使われている主力のトヨタ・クラウンのタクシー仕様車「クラウン・コンフォート」、1995年の発売から2017年5月25日までで22.2万台あまりが納車され、日本中の道をタクシーとして走っている。

 2016年、国内で納車となった新車のタクシーは、約1万5000台だったが、その8割がクラウン・コンフォートだったとされる。

 クラウン・コンフォートはタクシー専用車として重用された理由は、いくつかある。後席の寸法および後部トランク容積を可及的に大きくとり、料金メーターや無線装置、タコグラフなどタクシーとしての必要な装置が設置しやすいレイアウトや、リアドアの改変装置などタクシーに特化した装備が後付けしやすい設計となっていた。近年はタクシー禁煙化にともない灰皿の削除や、使いやすい3点式リアシートベルト、ナビゲーションの取り付けスペース+取り付けキットなども用意された。

 ボディサイズは全長×全幅×全高4695×1695×1525mm、ホイールベース2785mmで、いわゆる5ナンバー枠いっぱいのボディ寸法となっていた。なお、ホイールベースが105mm短いコンフォートも用意され、こちらのショートホイールベース版は小型タクシーに準拠した寸法となっていた。

 ところが、実はこのクルマ、“クラウン”と名乗ってはいるが、ベース車両は1988年デビューのX80型マークⅡセダンだ。さらにいうならX80系のプラットフォームは、その前世代からのキャリーオーバーだった。先に述べたショートホイールベースのコンフォートは、まさにX80型マークⅡ商用車系そのものなのだ。

 ところが、そのクラウン・コンフォートは、2017年3月をもって生産終了し、5月25日に販売を終えた。ライバルである日産セドリック・タクシーは、ひと足早く2014年12月に販売を終了している。

 かように日本のタクシー車両は基本的に四半世紀も前のクルマを改良しながら使っていたのである。日産などは、ロンドン・タクシーを生産、今年はニューヨーク・タクシーをデビューさせたのに、である。

 そんな貧弱な日本のタクシー車両が改善されるかもしれない。

■新たに開発が進むトヨタ次世代タクシー専用車

 トヨタが2013年の東京モーターショーで静かに展示したタクシー専用車を覚えているだろうか。トヨタ「JPN TAXI Concept」である。日本の自動車交通インフラを考慮した5ナンバーサイズのコンパクトで取り回し性のいいボディを採用したミニバンボディのクルマだ。国交省の「標準仕様ユニバーサルデザインタクシー認定要領」に適合している。

 その全長×全幅×全高は4350×1695×1700mm、ホイールベースは2750mm。このディメンションは、同社量販車種のカローラ・セダンのボディサイズ4400×1695×1460mmに全高以外かなり近く、実にコンパクトなモデルといえる。しかしながら、ホイールベースはカローラの2600mmに比べて相当に長い。これは後席居住性の確保が目的だと思える。

 トヨタでは当時、「優れた乗降性と余裕ある室内空間を実現した次世代タクシーパッケージ」としているが、確かに狭いタクシー乗り場で便利そうな助手席側リア大開口電動スライドドアや低いフロア高は、使い勝手が良さそうである。

 パワーユニットや主な諸元についてモーターショー会場では言及していなかったが、「タクシーの走行パターンに最適化した環境性能と経済性をもった新LPG(液化石油ガス)ハイブリッドシステムを採用する」としていた。

 この「JPN TAXI Concept」の市販型モデルが、この秋の東京モーターショーで発表され、年内に発売となりそうなのだ。一足先にワゴンボディのタクシーとして日産が投入したNV200タクシーは、日産本社がある神奈川県横浜市を中心に普及しており、日本のタクシーはリアスライドドアのワゴン型が一般的になるのだろうか。(編集担当:吉田恒)