IoT(Internet of Things/モノのインターネット)という言葉が囁かれるようになって、ずいぶん時間が経過したように思う。しかし、実際の生活のなかで“IoTによる恩恵”を感じる場面は、まだそれほど多くない。
スマートフォンやWi-Fiでインターネットに繋がるパソコンやタブレットなどに限らず、自動車、家電、産業機器など、あらゆる機器装置に対して通信機能が求められるのがIoTだ。その普及には、さまざまな環境で堅実な通信を行なうための無線通信システムが必須である。
前述したパソコンなどで馴染みのあるWi-FiやBluetoothなどは一般的によく知られた通信システムだが、昨年来の東京電力のスマートメーターに採用が決まった、サブギガ帯域を使ったWiSUN方式が、知られるところとなり、一部でサブギガ帯無線通信に注目が集まってきた。
サブギガ帯無線とは1GHz以下の周波数帯のことを意味し、その呼称は前述のWi-FiやBluetoothで使用されている2.4GHzと対比して表現、呼称したものである。2.4GHz帯は世界共通で使用できる周波数だが、サブギガ帯は国や地域によって使える周波数帯が異なるため、具体的な周波数で呼ばずにサブギガ帯と呼んでいる。日本では、2012年7月25日からサブギガ帯として920MHz帯が割り当てられている。
最近では、その920MHz帯を使ったLPWA(Low Power, Wide Area/低電力広域通信)と呼ばれる通信速度を極限まで落として長距離通信を実現したLoRaWAN、SIGFOXの通信規格が話題になってきた。このLPWAと呼ばれるSIGFOXやLoRaの登場で、通信は多様化しながら、従来のWi-FiやBluetooth、サブギガ帯無線などとの棲み分けが進んでいくものとされる。
京都の半導体メーカーであるローム(ROHM)グループの「ラピスセミコンダクタ」は、そのLPWAに対応したデュアルモード無線通信LSI「ML7404」を開発・発表した。「SIGFOX」と新たに「IEEE802.15.4k」の両方式に対応した無線通信LSIは世界初の製品となる。
免許不要のサブギガ帯域を使ったLPWAのなかでも、欧州を中心に世界30カ国以上で採用が進み、国内でも首都圏を中心に展開され始めた「SIGFOX」の無線方式に対応すると同時に、妨害波耐性が高く、より多くの端末をネットワーク傘下に収容できる特徴を持っている国際標準規格「IEEE802.15.4k」無線方式にも対応した。また新製品の「ML7404」は、極めて高い環境変装耐性を持っており、仕様空間の温度変化や電源電圧に対して安定した通信距離が得られ、同時にダイバーシティアンテナやFEC(Forward Error Correction)によって安定した受信性能を実現したのも特徴のひとつだ。
この業界初デュアルモード対応によって、適用範囲の広いLPWAゲートウェイなど幅広い用途・仕様での活用が可能となるという。IoTの世界的にみても“普及前夜”といえる今、無線通信技術の“最適解”探し、あるいは“模索”は、まだまだ続く。(編集担当:吉田恒)