日本における自殺率の統計について、厚生労働省は今年5月、平成29年度版の「自殺対策白書」を公開した。これによると、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)の国際比較では、日本は19.5で諸外国中6位。男女別では男性12位、女性3位となっており、諸外国と比較すると女性の自殺死亡率の高さが目立っている。また、先進7カ国のなかでは、日本の自殺死亡率が最も高くなっており、自殺者数は減少傾向にあるものの、女性・若者世代の自殺については国際的に見ても深刻な状況だ。
女性の自殺率の高さについて危惧されるなか、エムケイシー合同会社は、22歳から34歳の働く女性の『心の病』に関する調査を行った。「過去に、自殺・生き難さを考えたことありますか?」との質問に63%が「YES」と回答。「自殺・生き難さを考えた時、心療内科やカウンセリング施設などに行きましたか?」に対しては、40%が「YES」と回答した。加えて、「行った結果、問題は解決しましたか?」に対しては、「NO」との回答が52%と、専門施設に通っても問題が解決しないことが多々あることがわかった。
問題が解決しなかった理由を聞いたところ、「もっと親身になってほしかった」「診察よりも待ち時間の方が長く、余計死にたくなる」「『診断書が欲しいんでしょ?』と始めに言われ、理解してもらえないと思った」「話を聞いてくれるのは最初だけで、その後事務的な会話しかなくなった」「薬以外で精神面をケアしてほしい」「薬物療法が中心で根本的な解決に至っていない」「テストをした結果が、よく分からない」「3分診療では何も解決しない」「苦しくて来たのに、自分なりに説明をした後『なんで来たの?』と言われた。あまりにもその対応は辛く、泣きながら帰って、その一言でオーバードーズをして3日程意識を失くした」(※オーバードーズ=過量服薬)など、最後の希望と思い受診した専門施設において、理解されない・歩み寄られない事への失望や諦めの意見が多かった。
逆に、専門施設に行かなかった理由としては、「通っている姿を見られたくない」「行く勇気がなかった」「予約の電話が嫌」「行ったら『負け』な気がした」「自分が精神疾患と診断されるのが怖い」」など精神疾患を抱える事実を再認識することに対する恐怖などが感じられた。自分の問題に集中できずに他人からどうみられているか、社会からどう評価されるかに主軸を置いた思考が感じられ、更なる視野の狭窄が心配される。
働き方改革の推進など、抜本的な労働環境改善は素晴らしい取り組みだが、それらと併行して精神科や心療内科に通うことに対する社会全体の理解や、当事者に後ろめたさを感じさせない風土づくりといった、より成熟した「多様性に対する受容」の体制構築が急務となっている。(編集担当:久保田雄城)