2年前に電通社員が過労を原因に自殺したことを契機のひとつとして、長時間労働の是正や柔軟で多様な働き方の実現を目指した政府主導の取り組み「働き方改革」が進められている。2017年3月には「働き方改革実行計画」が取りまとめられ、今後はこのロードマップに基づいて、長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善を中心に、様々な取り組みや制度改革が加速していくと考えられる。
そんな中、企業が認識している課題は何か、また「働き方改革」に向けて具体的に何を行っているのかを探るべく、20歳以上の有職者を対象にGMOリサーチがアンケート調査を実施した。
現在所属している企業の課題・問題点について尋ねたところ、「人材の不足」(40.7%)と「特になし」(35.9%)が突出する結果となり、企業が抱える課題は「人材の不足」によるところが大きいことがわかった。また、「働き方改革に必要だと思う取り組み」を聞いたところ、「業務効率化のための社内フロー・制度の改善」(55.8%)、「業務効率化に向けたITツールの導入」(52.3%)、「時間外労働の事前申告」(50.4%)で過半数を超える結果となった。だが、全体的には大きな差はないことから、特定の項目に関心が高いわけではなく、各企業の課題に応じた多面的な取り組みが求められていると考えていいだろう。
その他特筆すべき点としては、「取り組みを予定・検討している」内容として「非正規雇用者の正社員化などのキャリアアップ」(30.1%)は3割を超え上位に挙がっているが、「実際に取り組んでいる」のは13.3%にとどまり、他の項目と比べて乖離が見られる。企業の課題として「人材不足」が挙げられていることから、まさにこれから取り組むべき課題と認識されているといえる。
また、「現在取り組んでいる」内容に絞ると、「時間外労働の事前申告」(25.7%)、「業務効率化のための社内フロー・制度の改善」(24.5%)、「女性管理職の登用」(24.4%)が上位に挙がった。一方で、1割未満に留まったのは「テレワーク・在宅勤務の導入」(9.6%)、「プレミアムフライデーの導入」(6.8%)、「副業・兼業の許可」(6.7%)だった。
さらに、働き方改革のために取り組んでいることのうち、回答割合が2割を超えた上位6項目について、中小企業/大企業別に集計して比較したところ、最も差の大きい項目で28.3ポイント、最小でも18.5ポイントも大企業が上回っており、大企業に比べ中小企業は具体的な取り組みが進んでいないことがわかった。
厚生労働省が先月30日発表した5月の有効求人倍率は1.49倍と、1974年2月以来43年3カ月ぶりの高さを記録している。働き方改革を最も妨げるものは人材不足であるというアンケートの結果は、この有効求人倍率の高さ故かもしれない。(編集担当:久保田雄城)