2015年に発生した電通女性社員の過労自殺を皮切りに、各社長時間労働の抑制に取り組んでいる。また、政府の「働き方改革」も相まって、ライフワークバランスを重視する考え方も浸透しつつある。しかし、従来の仕組みのまま、ただ残業を減らすだけでは、職場で不公平感が増すなど、新たな問題も発生する。
効率よく仕事をこなして定時で帰宅する従業員には残業代は当然支払われない。一方で、ダラダラ残業をした従業員には会社に居た分だけ残業代が支払われる。仕事が早い人のほうが、遅い人よりも給料が低くなってしまうという現象も、大きな不公平感を生む要因だ。
総合人材サービスを提供するパーソナルグループの、インテリジェンスビジネスコンサルタンツは、5月1日に残業をしなかった社員に対して20時間分の残業代を支払うインセンティブ制度を導入。効率的に仕事をこなして残業を削減している社員のモチベーションを維持することが目的だ。更に、労働時間に担保されるのではなく、社員一人ひとりが生産性を高めて短時間でも成果を出し続けることができる組織を目指しているという。
効率を上げて短時間で成果をあげている社員にとってはありがたい制度だ。ただ、一方で本当に必要に駆られて残業を行っている人にとっては、「残業=悪」という風潮はやりきれないものがあるだろう。逆に定時で帰れている人は、仕事量が少ない可能性も考えられる。「残業を減らすように」「効率を上げるように」と指示すると同時に、仕事の割り振りにも考慮する必要がある。如何に不公平感なく、適切な人に適切な手当を与えるが今後の大きな課題となるだろう。
同社はインセンティブ制度を半年運用して改善点も含む成果を発表するという。この制度が今後の長時間労働の是正や、不公平感の解消につながるものとなるのか。上手くいけば、今後の労務管理においてスタンダートな施策となりうる。半年後の結果を注目したい。(編集担当:久保田雄城)