10月22日は衆議院選挙である。各人それぞれ何を投票の判断材料にするかは様々であろう。しかし、なんと言っても国民の生活に直結する現政権の経済運営の実績が最も重要視される判断材料ではないであろうか。
安倍政権と言えばアベノミクスと呼ばれる大胆な経済運営が何よりもその特徴であろう。アベノミクスの成果と言っても、それは未だ道半ばであり、政策が全て完遂されたわけではない。ここでは今までのアベノミクスの経緯と実績を振り返り、安倍政権の約5年の評価の材料を示してみたい。
第2次安倍政権は世界経済がリーマンショックから回復し始め、日本では震災からの復興が軌道に乗り始めた2012年12月26日から始まった。アベノミクスは3本の矢からなる。1.大胆な金融政策、2.機動的な財政政策、3.民間投資を喚起する成長戦略である。第1の大胆な金融の量的緩和は総理に就任する前に日銀への政策批判から始まったと言ってもよい。この時期、欧米が大幅な量的緩和をする中、日本の緩和は弱すぎるという批判だった。
総理就任後、日銀は異次元緩和とも呼ばれる大胆な量的緩和に政策転換した。これが黒田バズーカとも呼ばれる功を奏し、急速な円安になる。株の評価基準はドル建てなので、それに比例し急速な株価回復、これによる企業業績の改善を実現した。
一方、円安は輸入価格の上昇である。物価上昇の中実施された消費税増税は明らかに消費を長期的に冷え込ませる結果になった。円/ドルレートの変動は直ちに輸入物価に反映される一方、輸出の伸びは緩慢で一時貿易赤字の状態を作り出す。
輸入物価高騰と消費税アップで消費者負担が増える一方、賃金上昇は緩慢でこれが消費者マインドの長期的冷え込みを生み出すこととなった。しかしその後、海外経済の回復とともに内需・外需の回復が起こり、これと団塊の世代の労働市場からの退出が相伴って有効求人倍率も上昇し、むしろ人手不足感が強い様相になる。
賃金も緩やかながら上昇傾向にある。就業人口も増大した。しかしながら目標である消費者物価2%上昇は実現できていない。消費も充分回復基調にあるとは言えない。リフレ政策からの出口戦略も不透明なままである。
総じて言えばアベノミクスはまだら模様であるものの景気回復を実現したと言ってよいであろう。しかし、アベノミクスの最も中心となるべき目標、PB(財政収支の均衡)は目途さえ立っていないという状況である。(編集担当:久保田雄城)