13日に開催されたG20においてIMFの財務基盤強化に向け2019年秋までに増資の決議をする検討が始められた。この増資が実現すれば、日本の議決権は現在、米国に次ぐ2位であるが、3位の中国に抜かれるのは確実だ。
13日に開幕されたG20(財務相・中央銀行総裁会議)においてIMF(国際通貨基金)の増資による財務基盤強化に関する事項が議題になった。IMFが国際的金融危機への対応力を強化するため「15次改革」として19年の総会までに増資それ自体の可否と各国の出資比率を決定することとなった。
加盟国の議決権を決定するクオータ(出資割当額)はGDPの規模を中心に外貨準備高など複数の要素を勘案し決定される。10年に「14次改革」として増資が行われたばかりであるが、この際GDP成長率の著しい中国の出資比率は6位から3位へと急上昇した。現段階での出資比率は日本が6.48%で中国が6.41%と、その差はわずかでしかない。仮に19年以降、増資が行われ中国が同意すれば、日本と中国のポジションが逆転するのは確実で、もしそうなればIMFでの中国の影響力が増大することとなる。実際、10年の増資後、IMFは11年に3ポストであった副専務理事ポストを4に増やして中国に1ポストを与えた。日本としては当然、こうした状況は回避したい考えだ。
米国も中国の影響力の増大を警戒しているようだ。14日、ムニューシン米財務長官はIMFの増資に消極的なコメントを出し、増資よりも運営の効率化を重視すべきだと主張した。同時に世界銀行の増資に関しては「資本の効率的配分が重要だ。増資は解決策にならない。」と明確に反対の姿勢を示した。前回の「第14次改革」の際は米国の負担増加に否定的な共和党の反対で発効が議決から5年も遅れたという経緯がある。現在の米国は、米国ファーストのトランプ政権であり、そもそもIMFのような多国間協力システムを軽視しており、多国間協力への予算自体も減らしていることもあって増資の決議自体が不確実だが、仮に増資の決議がなされたとしても前回以上に発効が遅れるであろうと予想される。
影響力を高めたい中国は「新興国の発言権を高めるべきだ」と強く主張しており、一方、2位のポジションを死守したい日本は「リーマンショック時の迅速な融資など、これまでの貢献を高く評価すべきだと」主張している。現段階では増資の決議自体が実現するか不透明であるが、国際協調の足並みの乱れが強まってきていることだけは確かである。(編集担当:久保田雄城)