トヨタが、同社タクシー仕様専用車として新型車「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を全国の正規ディラーを通じて10月23日に発売した。
これまで、日本国内を走っていたタクシーの多くは、トヨタ製「クラウン・コンフォート&コンフォート」と日産製「セドリック・セダン」だった。トヨタ製は1995年デビューの車両で基本設計は非常に古いクルマだった。クラウン・コンフォートの基本的な設計は1988年デビューの同社のX80型系マークⅡがベースで、基本的に四半世紀以上も前のクルマを改良しながら使っていたわけだ。そんな貧弱な日本のタクシー事情が、遂に改善される。
JPN TAXIは、2013年の第43回東京モーターショーで発表されたプロトタイプとほぼ同じデザイン、外観・寸法で登場した日本のためのタクシー専用車だ。ボディ寸法は日本の自動車交通インフラを考慮した5ナンバーサイズのコンパクトボディで、その全長×全幅×全高は4350×1695×1700mm、ホイールベースは2750mm。この長いホイールベースは余裕のある後席空間確保に有効だ。
日本の“おもてなしの心”を反映し、子どもや高齢者、車いす使用者、外国からの観光客など、人に優しく快適なタクシー専用車として開発した。トヨタは、JPN TAXIの普及により、日本の風景を変え、バリアフリーな街づくり、観光立国への貢献を目指す。
具体的には、乗客が乗降しやすい低床フラットフロアや大開口のリヤ電動スライドドア(左側)、車いすでの乗車も可能な構造など、グリップから構造全体に至るまで工夫と改良を重ね、人に優しいユニバーサルデザインとした。
また、ロングライフで流行に左右されないスタイリングや、古くより日本を象徴する色として愛用されてきた藍色「深藍」のボディカラーをはじめ、ひと目でタクシーと認識でき、かつ街並みに美しく溶け込むことを目指した。
さらに、ドライバーの観点では、ピラーの位置・形状の工夫やフェンダーミラーまどにより良好な視界を確保した。タクシー専用設計のこだわりとしては、ナビゲーション画面・料金メーターを乗客にも見やすいセンター位置に設置できるダッシュボードデザインにするなど、機器類の配置を用途に合わせて見直し、機能性を向上させた。
車両性能については、1.5リッターLPGエンジンをモーターがアシストする新開発LPGハイブリッドシステムを採用することで、19.4km/リッターの低燃費とCO2排出量の大幅な低減を達成し、環境性能と動力性能を高次元で両立させ、「Toyota Safety Sense C」や6つのSRSエアバッグの標準装備など、安全装備も充実させた。
サスペンションは前ストラット式独立、後3リンクコイルのリジッドとして乗り心地と耐久性の両立を図った設計とした。
トヨタのタクシーは、1936年のトヨダAA型から始まり、1953年に発売したトヨペットスーパーRH型など、長年にわたり多くの乗客の移動を助けるクルマとして愛用されてきた。
トヨタはこのJPN TAXIは、2020年の東京オリンピック、パラリンピックで、世界から訪れる乗客・観光客の移動を助けるとして展開。グレードは標準グレードの「和(なごみ)」が327.78万円、LEDライトや天井に後席エアコンサーキュレーターなどを装備する上級グレード「匠(たくみ)」が、349.92万円。(編集担当:吉田恒)