借りやすい住宅ローンの「問題点」とは

2017年11月03日 07:15

画・借りやすい住宅ローンの「問題点」とは

低所得者層であっても借りられる住宅ローンは利用しやすさが大きな特徴である。その反面、低金利で融資を行う銀行にとっては利益の縮小や貸し倒れのリスクと向き合うといった側面もある。安易な金利政策がこの問題の背景にあるといえるだろう。

 住宅ローンのもつ大きな特徴といえば、低所得者であっても条件次第で借入を受けることができるという点にある。2016年には銀行の住宅ローン残高が120兆円を超えたというニュースもあることから、多くの人が銀行から住宅ローンの借入を受けているということがわかる。数千万円単位の借入をしても返済期間が長いことや金利が低いことなどが利用者の増加に関係しているといえるだろう。

 住宅ローンの利用において重要なのが利率設定である。その点、住宅ローンの場合は低金利で借入を受けることができるのだが、その背景にあるのが日本銀行のマイナス金利政策である。この政策により、金利は常に低い水準で推移することとなり多くの利用者がその恩恵を受けることとなった。また、銀行間の競争も金利引き下げに大きく影響しており、これは顧客を獲得するためには競合する銀行よりも低金利での融資ができなければならないという考え方である。この他にも銀行は様々な特典を用意して顧客の囲い込みに躍起になっている。

 ここで問題となるのが、低金利で融資を行って果たして銀行にメリットがあるのか、という点である。住宅ローンに限らず、融資を行った銀行が利益を得るためには設定した金利に応じて受け取る利息が必要だ。そして、その利息を受け取るためには返済されなければならない。高額の融資を行う住宅ローンの場合はそれだけ貸し倒れのリスクもつきまとうのだが、低金利で融資を行っている以上はそのリスクを回収することも難しい。

 にもかかわらず低金利で融資を行う理由は、先述の通り顧客を獲得するという一点にある。住宅ローンという商品はどの銀行でも取り扱うことができる金融商品である以上、常に競合のことは考えておかなければならない。そして、実際に融資を行った後は貸し倒れのリスクとも向き合う必要がある。銀行にとっては、住宅ローンはかなり大きなコストをかけつつも利益がそれほど見込めない商品となりつつある。

 実はこの点こそが住宅ローンの抱える問題点ともいえる。誰もが利用しやすい住宅ローンである背景には、低金利で貸付を行う銀行という存在がある。かといって安易に金利を上げれば次は顧客の減少につながりかえって悪循環となる。貸す側と借りる側双方にとってどのような仕組みが最もふさわしいのか、借りやすい住宅ローンだからこそしっかりと議論する時期に来ているのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)