日本銀行は2013年4月に始めた金融緩和政策を継続しているが、9月21日には新たな政策枠組みとして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」を導入した。また、政府は事業規模28兆円の経済対策を8月に閣議決定し、10月 11日には2016年度第2次補正予算が成立するなど、景気が低調に推移するなかで、景気対策の両輪となる金融・財政政策の投入・転換が行われている。
そこで、帝国データバンクは、金融緩和政策の効果や政府の経済対策に対する企業の見解について調査を実施した。
自社の企業活動において、金融緩和政策の効果について実感があるか尋ねたところ、「実感はない」と回答した企業が59.7%と約6割にのぼった。他方、「実感がある」は12.9%にとどまり、多くの企業で金融緩和政策について、その効果を肌感覚で認識するには至っていないことが明らかとなった。
金融緩和政策の効果について「実感がある」とした企業を業界別に見ると、『金融』が24.8%と最も高く、次いで『不動産』が22.0%となり、この2業界のみが2割を超えた。とりわけ、『不動産』においては、「マイナス金利で住宅ローン金利が低下したことに加え、金融機関が比較的リスクが少ない不動産に関連する融資に積極的に取り組んでいる」(貸事務所、北海道)や「自社の事業資金融資や、顧客が不動産購入時に組む各種ローンが通りやすい」(不動産管理、神奈川県)といった、住宅ローン金利の低下などにともなうプラスの効果をあげる企業が多くみられた。
他方、『金融』からは、「貸出金の利率が他の金融機関との競合等により大幅に低下している」(信用金庫・同連合会、東京都)や「資金運用が非常に困難になった」(損害保険、東京都)といった意見がみられ、中長期の資産運用など金利低下によるマイナス効果を指摘する声が多かった。
規模別にみると、「実感がある」とした企業は「大企業」が 13.6%、「中小企業」が12.7%、うち「小規模企業」が10.6%となり、「大企業」が「小規模企業」を3.0ポイント上回った。企業からは「大企業には効果があるだろうが、中小企業に効果が出るのは時間がかかると感じる」(一般土木建築工事、山口県)など、企業規模が小さいほど金融緩和政策の効果を実感していない様子がうかがえるとしている。
また、自社の主力商品・サービスの販売価格が1年前と比べてどの程度変化したか尋ねたところ、「上昇」した企業は17.7%となり、「低下」(24.0%)を6.3ポイント下回った1。他方、「変わらない」は51.8%で半数を占めた。また、平均変化率はマイナス0.48%となり、企業の主力商品・サービスの販売価格は、1年前と比べてやや低下したという結果となった。(編集担当:慶尾六郎)