財務省は2018年より自動車部品などの原材料になる「ジスプロシウム鉄合金」「水酸化アルミニウム」「P-tert-ブチルフェノール」の3品目について関税率をゼロにすることを検討している。
UNCTAD(国連貿易開発会議)の一般特恵の方針に従い、日本では1971年から発展途上国などを対象に特恵関税制度を採用している。特恵関税制度とは、発展途上にある国あるいは地域を原産地とする特定の輸入品について、通常課される関税率よりも税率を低く設定して発展途上にある国あるいは地域の輸出を促進し、よりスムーズな工業化を促して、対象国の経済発展を支援しようとする制度である。特恵国からの輸入に関しては原則全ての品目が税率ゼロであり、鉱工業品については一部の例外があるが全ての品目について原則として無税である。
16年11月、財務省は関税・外国為替等審議会において特恵関税制度の対象国の要件の見直しを行った。特恵関税制度では「高所得国」は対象外とされるが、3年連続で「高中所得国」とされ、当該国あるいは地域の輸出額が世界の輸出額の1%以上を占める国・地域も対象外とすることとなった。これにより高中所得国に指定されている中国とメキシコ、ブラジル、タイ、マレーシアの5カ国が新たに適用対象外となり、先進国と同様の2.6~3.3%の税率が課されることとなり、この税率の適応は19年度までに行われる予定である。
メキシコ、マレーシア、タイについては日本と2国間協定国が存在し、特恵国を卒業してもEPA税率が適用されるため影響はないが、中国、ブラジルについては自動車部品関連工業にコスト面で影響が出る。今回、財務省が上記3品目について18年から関税率ゼロを適用する方針を示したのはこの特恵関税制度見直しを考慮してのことである。
20日に名古屋税関が管内5県(愛知、岐阜、三重、長野、静岡)について17年度上半期(4~9月)の貿易概況(速報)を公表したが、自動車部品の輸出額は前年同期比16%増加で1兆2494億円と2四半期連続で増加し、1979年の統計開始以来過去最高となっている。国内の自動車部品工業は未だグローバル市場の中で競争優位の状態にあり、輸出産業の牽引役であることは間違いない。近年、製造業の国内回帰の兆しが多少見られるものの、未だ工場の海外流出は日本産業としては雇用面から見てもマイナス要因である。そうした観点からも自動車部品工業をコスト面から保護することはグローバル競争上も重要なことであることは間違いない。(編集担当:久保田雄城)