大卒で入社した人の初任給が平均で20万3400円となり、過去最高の水準となった。この過去最高額の更新は3年連続の状態で推移しており、これは景気の回復によって労働市場が改善した結果ではないかとの見方が強い。少子高齢化が進み、団塊の世代の退職によってどの企業も人材が減少していることから数年前より「売り手市場」といわれているが、こうした初任給の最高額更新はさらに売り手市場を加速させることになりそうだ。
業種ごとに内訳でみると、大卒の中で最も高い水準となったのが情報通信業で、前年比で1.4%増だった。それに対して飲食店などのサービス業については0.7%減少となっており、必ずしもすべての業種で初任給が増加しているというわけではないことがわかる。また、企業の規模では従業員が1000人以上在籍する大企業の場合で前年比2%増だったのに対し、1000人未満の企業は0.7%の増加であることから、初任給増加の割合は企業の規模に比例するという結果となった。男女別の比率では男性は前年比0.9%であるのに対し、女性は2.1%となったことで、男性よりも女性の増加率が高い。また、大卒だけでなく高卒の初任給についても前年比0.2%の増加となっている。
初任給が増加する背景にあるのは、やはり求人数に対して就職希望者が多い「売り手市場」にある。かつては就職氷河期と呼ばれた時代もあったが、現在は企業からのトータルの求人数が多いことから就職を希望する学生にとってはじっくりと就職先を選ぶことができるようになっている。企業にとっても、できるだけ優秀な人材を確保したいという考えがあることから、最も目に見える形として初任給を高めに設定しているところが増えているということである。また、それに伴い既にその企業で働いている従業員の賃金についても見直すところが多く、初任給が高くなっているということは様々な方面で影響を及ぼしているといえるかもしれない。
とはいえ、企業の本音はできるだけ人件費を抑えたいというところにある。また、体力のない企業は他の企業がやっているからといってそうおいそれと初任給を上げて募集する、といったことができない可能性も高い。こうした売り手市場は今後も続くとみられており、初任給の増加についても同様に継続される可能性が高い。経済産業省ではこうした企業と新卒学生を含めた求職者との関係を今後も注視していくとともに、景気の動向についても確認していきたいところだ。(編集担当:久保田雄城)