労務行政研究所は、2016年4月の新卒入社者の初任給を調査し、東証第1部上場企業227社について速報集計をまとめた。
調査では、16年度の初任給を33.9%の企業が「全学歴引き上げ」した結果となった。一方、初任給を前年度と同額に「据え置き」した企業は66.1%。
今年の春闘交渉で賃上げは抑制傾向にあったために、初任給据え置き率も前年より約7ポイント増加した。また、初任給額は、大学卒で21万313円、高校卒で16万4894円の水準だ。同一企業で見た前年度の金額に比べ、それぞれ820円・0.4%、714円・0.4%と僅かだが上昇である。
06年度以降、企業業績の回復や団塊世代の大量退職などを背景とした企業の採用意欲の高まりを反映し、据え置き率は低下傾向にあった。しかし、リーマンショックの影響を受け世界的不況に陥った09年度は一転9割を超え、以降95%前後の高い割合が続いた。
14年度以降、輸出産業を中心とする企業業績の回復、デフレ脱却に向けた賃上げの政労使合意などから、春闘交渉では大手を中心にベースアップや賃金改善の実施が相次ぎ、初任給も引き上げる企業が増加した。
15年度の据え置き率は58.7%で、06年度以降では最も低い割合となった。16年度は前年度に比べると賃上げは抑制傾向にあり、初任給の据え置き率も66.1%と15年度に比べて7ポイント程度増えている。
初任給を33.9%の企業が「全学歴引き上げ」したわけだが、これは前年度より6ポイント低下した数字である。景気の先行き懸念の高まりで引き上げ企業が減少して、賃上げ幅も小さくなったと考えられるだろう。(編集担当:久保田雄城)