企業にとって優秀な人材を確保することは、採用活動における最大のテーマである。中でも新卒社員の採用は、企業の若手底上げなど様々な意味でどこも力を入れている部分だ。最近では団塊の世代が定年を迎え多くの企業が人材不足となっており、採用活動が活発になっている時期ともいえる。そんな時勢を反映してか、学生の内定辞退者が多いという事態が起きている。
リクルートキャリアの調査では、2018年度に大学を卒業見込みで企業からの内定を受け取った学生のうち、およそ6割が内定を辞退したという結果が出た。この6割というのは、リクルートキャリアが集計をするようになってからの6年間で最も高い水準を示しているという。企業の採用活動が活発になっているということは、それだけ多くの求人があるということでもあり、新卒の学生にとっては選択肢も多いということになる。企業の採用活動が活発になっている現在は、まさに求職をする新卒学生にとっては「売り手市場」であるといえるだろう。
この「売り手市場」は決して学生だけの話ではない。団塊の世代が退職する数年前から少しずつこうした傾向はあり、学生のみならず中途採用の場合であっても求職者が有利な立場である状態が続いている。それでも6割の学生が内定を辞退しているというのはこれまでにない水準の高さという。こうした状況が続く背景にあるのは、景気の拡大だろう。不況の状態が続けば企業は採用を控える一方、景気が回復してくれば逆に企業も求人を増やすことになる。また、就職活動をする学生にとっても基本的に数社の企業を併願することになるため、複数社から内定が出た場合には1社を除いて辞退をする場合がほとんどだ。景気回復による求人の増加と内定辞退率の高さは大きな関係があるといえる。
とはいえ、この状況というのは採用活動を行う企業にとっては決して良い状況とはいえない。優秀な人材はどこも必要だが、かといって人件費が高騰することもできれば避けたい。ましてや未知の可能性をもった新卒ともなれば、初任給からいきなり高い水準の賃金を支払うことも難しいだろう。結果的に少しでも条件の良い企業が優秀な人材を囲い込むことになるため、競争力の低い企業は人材の補強もままならないという状態に陥りやすい。長期間にわたって採用活動を続けることになる企業も多く、内定の出し方やそのタイミングについても慎重な判断をするところも増えてくるだろう。(編集担当:久保田雄城)