残業上限、一部上場企業のうち半数が80時間以上

2017年12月22日 06:06

画・「働き方改革」とは「有休取得」「残業減」、8割か_「実感していない」

東証一部上場企業のうち過半数が過労死ラインを超えた残業上限時間を設定できる労使協定を結んでいることがわかった。働きすぎの日本のサラリーマンの実態が図らずも浮き彫りとなった形だ。

 残業はどんな仕事でも多かれ少なかれある、これは日本の企業における一種の常識となりつつあるが、そんな残業について東証一部上場企業225社のうち過半数の企業が月80時間以上まで残業させることができる労使協定を結んでいることがわかった。月80時間以上の残業というは、いわゆる「過労死ライン」ともいわれており、どの企業も残業が常態化しているという実態が浮き彫りになった形だ。

 労働基準法では、労働者の法定労働時間というものが定められており、1日8時間、週40時間までと決められている。この法定労働時間を超えた場合というのがいわゆる「残業」と呼ばれるものにあたる。企業側がこの法定労働時間を超えて働かせる場合には、残業時間の上限を定める労使協定を結ぶ必要がある。この協定で残業時間の上限が設定されればそれ以降はどんなに残業をしても違法になることはない。この労使協定は労働基準監督署に届け出る必要があるが、今回の調査では各地の労働局に対しての情報公開請求を行った結果をもとに行われ、その結果過半数の企業が労使協定を結んでいたことが明らかとなった。

 この調査結果以前から、「働きすぎ」ともいわれる現代のサラリーマンの残業時間というものは常に社会問題となっている。政府は残業時間を抑える罰則規定がついた規制を2019年度に導入する方針を固めており、現在労使協定を結んでいる企業についてはその見直しを迫られることとなる。残業時間が長い業態としては、主にIT関係の企業や建設業、製造業などが多く、いずれも日本経済を支えている業種・業態ばかりである。現在、経営者の多くは「働き方改革」という言葉を口にするものの、残業時間の削減といった部分についてはまだ手付かずといったケースがほとんどといえるだろう。とはいえ、企業側としても残業時間は減らしたいものの、繁忙期などはどうしても長時間労働せざるをえない状況が続いていることから、すぐに残業時間の上限を減らすということは難しいようだ。

 こうした状況において、最も重要なことは「正確な労働時間の把握」である。罰則規定つきの残業上限の規制が導入されたとしても、罰則逃れを理由とした隠蔽などが行われないとも限らない。そのためには、企業ごとの正確な労働時間を把握する仕組みづくりもセットで考える必要がある。残業そのものが完全に排除すべきというわけではないが、労働者と企業との間で適切な運用ができることこそが理想的な「働き方改革」といえるだろう。(編集担当:久保田雄城)