働き方改革届かず 教員の長時間労働是正を阻むもの

2017年12月14日 06:29

画・働き方改革届かす_ 教員の長時間労働是正を阻むもの

働き方改革の潮流のなか、もともとは教員の勤務体系に柔軟に対応する為の「給特法」だが、制度見直しを含めた、教員の長時間労働是正が求められている。

 日本経済再生に向け、最大のチャレンジとされる働き方改革。政府は今年3月に開いた働き方改革実現会議で、残業時間の上限(月45時間、年間360時間)を法律に明記する一方、特例で「年720時間(月平均60時間)」まで認めるなどの、長時間労働是正のための新制度案を提示した。政府案では、違反企業に対する罰則を設ける一方、特例で月平均60時間までの残業を認め、労使協定を義務付け、「過労死ライン(直前2~6カ月の平均が月80時間超)」を踏まえたワークライフバランスの改善を目指している。

 一般企業に対する長時間労働是正の動きは活発化している一方、なかなか働き方改革の進まない業種も存在する。その一つが学校の教員だ。公立学校の教員は、その勤務態様の特殊性をふまえた、いわゆる「給特法」が1971年に制定されている。これは、時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに、給料月額の4パーセントに相当する教職調整額を支給することを定めた法律で、実質どれだけ働いても残業代が出ないという事態を招きかねない。

 東京都教育委員会は、小学校39校、中学校40校、都立高等学校17校及び都立特別支援学校9校の計105校のうち常時勤務する教員全員を対象に、都内公立学校教員の勤務実態調査を実施した。これによると、教諭(主幹教諭・指導教諭・主任教諭を含む。)の平日1日当たりの在校時間は、中学校が最も長く、続く小学校においても、11時間を超えている状況にある。副校長については、いずれの校種においても、12時間を超えている状況にある。教調査対象者(養護教諭除く)の1週間当たりの在校時間平均は約週60時間にのぼる。月換算すると、残業は月80時間を超え、「過労死ライン」へ抵触する可能性もある。

 もともとは教員の勤務体系に柔軟に対応する為の「給特法」だが、問題は制定された根拠だ。1966年に行った教員の残業時間調査が指標となっており、当時の平均は月8時間。50年後の現在、教員の残業時間は増えている。一般的には、「超勤4項目」と呼ばれる(1)生徒の実習(2)学校行事(3)職員会議(4)災害などの緊急事態以外の授業準備や部活動は、教員の「自発的」な活動とされ、そもそも残業に含まれない可能性が高いという。教員の場合、残業という概念自体が一般企業のそれとは大きく異なる体系であるため、残業時間の短縮といった施策は意味を成さない。

 政府は、既に教員の長時間労働是正に動き出している。文部科学省は、2018年度の公立小中学校の教職員定数を3800人増員するよう財務省に求める方針を固めた。2020年度から始まる新学習指導要領の運用に向け、多忙化が進む学級担任の負担を減らす狙いだ。教育を担う学校教員の労働環境の整備の重要性は高いといえる。今後の抜本的改革にも期待したい。(編集担当:久保田雄城)