ルネサスエレクトロニクスが大型表示ドライバ事業から撤退

2012年02月08日 11:00

 ルネサス エレクトロニクスは大型表示ドライバ事業から撤退すると発表。大型表示ドライバICの開発は2012年3月末をもって停止予定、既に量産されている大型表示ドライバIC製品の供給についても、2013年3月末をもって停止予定という。

 海外勢との競争激化で価格下落が激しい液晶パネル。結果、テレビを主力とする企業の業績不振が顕著である。「世界の亀山モデル」で席巻したシャープは過去最悪の2900億円の赤字を見込み、プラズマパネル技術を誇ったパナソニックも7800億円と過去最大の赤字、完成して間もない尼崎工場の生産を停止する事態となっている。また、ソニーの赤字予想は2200億円に上り、テレビ事業の赤字は8年連続、韓国サムスン電子との液晶パネル合弁事業の解消という方針転換を迫られた。 ルネサスの大型表示ドライバ事業からの撤退は、こういった情勢の煽りをまともに受けた結果だと考えられる。ルネサスは微細化による製造コストの削減や開発の効率化などを実施し、業績の改善に努めてきたが、採算の確保が困難な状況が続き、第3四半期決算でも前四半期比減。今後も回復の見通しが立たないとの判断に至ったものである。

 一方で、スマートフォンやタブレット端末などを主とする中小型のディスプレイは、その普及と相俟って堅調なようである。産業機器向けを中心に中小型液晶ディスプレイを開発、製造、販売してきた京セラが、車載用液晶ディスプレイなどの市場拡大を見込んで2月1日にオプトレックスを完全子会社化したことなどからも、その市況は窺える。今回、大型表示ドライバ事業からの撤退を発表したルネサスも、中小型表示ドライバIC製品については今後とも展開を続ける予定であるという。

 ディスプレイ業界に限らず、高い技術を誇った日本企業が、世界の価格競争に巻き込まれながら衰退の一途を辿っている。今後の発展のためには、ただ不採算事業から撤退するだけでなく、各企業が得意事業に注力することで、高付加価値或いは真似のできない技術を確立し、価格競争に巻き込まれない状況を作ることが望まれる。ルネサスはその道を辿れるのか。震災により壊滅的な被害を受けながら、当初の予想を上回る復旧をしてきたルネサスである。大いに期待してよいのではないだろうか。