自動運転の基盤となる知能化ソフトウェアの研究から開発を完全統合する新会社「TRI-AD」を3月末までに東京に設立。写真はCEOに就く、米国「TRI」のChief Technology Officerを務めるジェームス・カフナー氏
トヨタ自動車は、自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するために、新会社「Toyota Research Institute Advanced Development(TRI-AD)」を2018年3月下旬までに、東京に設立することを決定した。
新会社のCEOには、米国に本拠を置く「Toyota Research Institute(TRI)」のChief Technology Officerを務めるジェームス・カフナー氏が就任する。また、米TRIのCEOであるギル・プラット氏も役員として就く予定だ。
TRI-ADでは、新規採用に加え、トヨタ、TRI、アイシン、デンソーのメンバーも含めて1000名規模の体制・組織を目標とする。また現在、新会社の研究開発拠点として、アクセスや採用面で魅力のある新たなロケーションを選定しており、英語を社内公用語にすることも含め、仕事の進め方や社内ルールなども新たに構築し、次世代企業運営のひとつのモデルケースとすることを目指す。
自動車業界は100年に一度の変革期にあり、なかでも自動運転の分野では、Lidarのような新たなセンシングデバイス、ディープラーニング技術を用いた画期的な認識、判断性能の向上や、無線通信によるOTA(Over The Air)を用いたソフトウェアの更新、自動運転用地図のアップデート、さらにはそれらの自動生成など、幅広く新しい技術が求められる。とくにソフトウェアやデータハンドリング技術の重要性は、これまでとは比較にならないスピードが要求される。
トヨタは、こうした要求に応えるために、ルノー・日産連合や米自動車大手、ドイツ勢など競合他社と異なる専門企業設立というアプローチで、自動運転への道筋を探る。
このような環境変化に対応すべく、トヨタは2016年にTRIを北米に設立し、AI、自動運転、ロボティクスといった技術の研究を行なって来た。そして、今般、さらなる競争力強化を目指し、新会社「TRI-AD」を設立することとなった。
新会社「TRI-AD」の狙いは以下のとおり。
研究から開発まで完全に統合したソフトウェア開発の実現、及びデータハンドリング技術の強化。TRIとの連携を強化し、その研究成果を先行開発、そして製品へと効率良くつなぐこと。
研究、先行開発領域において、トヨタグループ内での開発の連携強化による開発のスピードアップ図り、国内外トップ人材採用により開発力を強化しつつ、トヨタグループ内の知能化人材を育成することとなる。
今回、これらを実現するために、従来とは異なる発想で新たなスキームの構築が必要であり、アイシンとデンソーおよびトヨタは、自動運転技術の先行開発分野における共同技術開発に向けた覚書を締結した。新会社への出資金は5000万円でトヨタが90%、アイシンとデンソーがそれぞれ5%を負担する。
当面3社は、それぞれが新会社に約3000億円以上の開発投資を実施する。今後3社は、具体的な共同開発契約の締結を目指して、協議を進める。
新会社のCEOを務めるジェームス・カフナー氏は、「製品として高品質なソフトウェアを作りあげていくことは、トヨタの自動運転開発において大変重要な取り組み。新会社のミッションは、世界トップクラスの人材を新たに採用することも含め、トヨタグループの技術力を強化することで、より効率的に、そして今までにない方法で、ソフトウェア開発を加速させていくことにある。新規採用はグローバルに実施する」とした。
新会社TRI-ADの取締役に就く、米TRIのCEOギル・プラット氏は、「TRIが開設され2年、取り組んできた研究成果を、今後TRI-ADがいっそう加速させる」と述べた。(編集担当:吉田恒)