今回の文科省調査が地方教育行政の組織・運営に関する法律・48条に基づく「文科大臣は都道府県・市区町村に対し、都道府県・市区町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導または援助を行うことができる」という規定に照らして、その目的に則る必要行為といえるものか、疑問が残る
前川喜平前文部科学事務次官が愛知県名古屋市の公立中学校の公開授業で講演したことに、講演の録音提供まで求めた文部科学省の行為に、教育への政治介入との懸念や教育現場が委縮してしまうと危惧する声があがっている。国会でこうした調査がなぜ行われたのか、根拠や正当性、政治家の関与の有無についての議論が求められる。
前川氏は弁護士を通し19日までに「個別の学校の授業内容に対する国の直接的な介入は異例であり、教育基本法が禁じる『不当な支配』にあたる可能性が高い」とコメントを出した。前文科事務次官のコメントだけに指摘は重い。
また「文科省が自らこのようなことを行うとは考えられない」として「外部から何らかの強い政治的な働きかけがあったのだと思う」と提起した。
今回の文科省調査が地方教育行政の組織・運営に関する法律・48条に基づく「文科大臣は都道府県・市区町村に対し、都道府県・市区町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導または援助を行うことができる」という規定に照らして、その目的に則る必要行為といえるものか、疑問が残る。
また同53条では「48条規定による権限を行うため必要があるときは地方公共団体の長または教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について必要な調査を行うことができる」としているが、そもそも48条の目的に則した調査行為か、政治的介入が疑われている。
民進党など野党6党は19日「教育現場不当介入問題野党合同ヒアリング」を開き、文科省が名古屋市教育委員会に対して前川氏の授業内容等の報告や録音データの提供を繰り返し求めたことに同省担当者から話を聞いた。
議員側から「前川氏の講演には文科省として問題はなかったということでいいのか」と質したのには、文科省担当者は「現時点で把握している情報によると、不適切なところは確認していない」と答えた。
一方で、前川氏が今後、別の学校が同様の授業に呼ばれた場合についての問いには「仮定の話に答えるのは難しい」と文科省担当者が答弁した。出席議員から「圧力だ」と指摘の声があがった。教育基本法の趣旨に照らして個別の授業に行政が関与しすぎるのは明らかに問題だ。(編集担当:森高龍二)