自動運転の研究は、自動車メーカーにとっては今最も大きなテーマとなっており、国内外を問わず各メーカーごとに盛んに研究開発が進められている。日本国内でも自動運転車の実証実験が行われる等、実用化までもう少しのところまで来ているという感もある。しかし、そんな折にアメリカのウーバー・テクノロジーズが自動運転の公道での実験中に歩行者を巻き込んだ事故を起こしたというニュースが入ってきた。この事故は、自動運転の開発を進める各メーカーに影響を及ぼすこととなった。
影響のあったメーカーのひとつがトヨタ自動車<7203>だ。トヨタ自動車は、アメリカで予定されていた自動運転車の公道実験を一部中断すると発表した。トヨタ自動車はもともと今回事故を起こしたウーバー・テクノロジーズと配車サービスで提携を行っているが、ウーバーが起こした自動運転車の事故については技術的な関係はない。それでも実際に走行実験を行うドライバーの影響を考えて公道での実験中断を判断したという。
もともとトヨタ自動車では、自動運転技術について安全でかつ自由に移動するということをコンセプトとしており、そのコンセプトを考えた場合死亡事故が起こった自動運転技術については改めて検証する必要があると考えられる。もちろん今回のウーバーの自動運転における死亡事故は、トヨタ自動車にとっては直接の技術的な関わりはないものの、世間からの見方というのはそうではない。事実、ウーバーの実証実験の際には、公道での実験はまだ早すぎるでのはないかという意見も識者から出ており、今回の死亡事故によりさらに懸念材料が増えたとの見方も強い。そして、それはトヨタ内部であっても例外ではないというわけだ。
日本国内でも、公道を利用した自動運転車の実証実験が行われており、2017年12月にはベンチャー企業のZMP社が運転席に人がいない状態での自動運転車を公道では知らせる実験を行った他、日産自動車<7201>もDeNA<2432>と提携し自動運転車の公道実験を行っている。今回の死亡事故を受けてこれらのメーカーが実験を中止するという方針はまだ未定だが、トヨタが中断したことは少なからず影響があるとみて良いだろう。日本国内では公道を利用しての自動運転車の実証実験において、死亡事故を含め人身事故を引き起こしたというケースはない。しかし、今後も全く事故が起こらないという保証もない。技術の進歩に伴い、自動運転車の実用化は一定の目処が立ちつつあるものの、今回の死亡事故で新たな課題が浮き彫りになったといえるだろう。(編集担当:久保田雄城)