金融庁は2月、各金融機関が対応すべきマネーローンダリング(資金洗浄)およびテロ資金供与対策に関するガイドラインを公表した。世界各国で強化されてきたアンチマネーロンダリングだが、日本の取り組みは遅かった。
金融庁がガイドラインを公表した背景には、2008年に行われたFATF(ファトフ:資金洗浄に関する金融活動作業部会)第三次対日相互審査のレビュー結果が、加盟国中29の下から5番以内という低い結果だったことが大きい。世界各国で強化されてきたアンチマネーロンダリングに対し日本の取り組みの遅れが顕著になり、19年10月のFATF第四次対日相互審査が始まるのを前に政府・金融機関の対応が迫られている。
米国では、経営陣によりリスクに応じて対応を変える方針が明確化されていて、方針を実践するためのマネーローンダリング専門チームも設置されている。また、日々の口座取引システム上のモニタリング・フィルタリングで取引を監視している。
金融庁のガイドラインではマネーローンダリング対策を事務部門が行うだけではなく、経営陣も関与すべき課題を明確にしたこと、また専門家の設置と育成を求めていることから、ようやく米国などの取り組みに近づいたことになる。
08年からATMで10万円を超える現金の送金が出来なくなったが、これは911ニューヨークテロ事件以降始まった規制で、今では本人確認の写真提示がなければ銀行口座が開設できなくなっている。これらは国際基準に合わせた顧客管理の取り組みだが、金融機関は顧客の利便性を犠牲にすることもやむを得なくなっている。
一方、消費者も気を付ける必要があり、電子メール、求人サイト、チャリティーサイトから海外送金の援助という勧誘もあり、不正資金の送金代行などのマネーローンダリングに加担することがある。知らないうちに資金洗浄の手助けをしないよう、個人もマネーローンダリングに対する正しい知識を持つ必要がある。(編集担当:久保田雄城)