3Dプリンターは工業製品の部品を作る、というイメージが強い。しかし驚くことには世界中で家の建築に使われ始めているという。日本での取り組みはどうだろうか。
三次元オブジェクトを造形できる3Dプリンター、始めて商品化されたのは1987年で工業用部品やデザイン・試作品の用途が多いが、近年数万円で購入できるホビー用低価格3Dプリンターも販売されている。
建築業界では3Dプリンターを主に建築模型に利用してきたが、家などの建築物を作るという動きが始まっている。世界で始めて建築物を作った例として有名なのは、16年5月アラブ首長国連邦のドバイに作った床面積約250平方メートルのコンクリート製オフィスだ。オフィス建設では高さ6m、幅12m、奥行き37mといった巨大な3Dプリンターが使われたが、プリンター操作はたった1人で行った。内装工事や設置などは他の電気技師や設置作業者合わせて17名で行い、約17日間で完成した。人件費を抑えたことで価格は従来建築の半額14万ドルだった。
他にも3Dプリンターによる建築物は増加、15年中国では試験的に5階建ての住宅を建設、同年にはフィリピンでホテルの別館を建設、17年モスクワに建設された約38平方メートルの住宅は24時間で建築、費用は1万134ドルだったという。
いずれも低コストで工期も短いのが魅力だが、我が国での現状はどうなのだろう。まず挙げられるのが建築基準法に合致するかどうかであるが、建築物の素材や工法の規制もあるため難しい、というのが専門家の見方である。また地震大国日本では鉄筋入りの基礎工事は必須であるが、ドバイのオフィス工事は鉄筋入りだったので、3Dプリンターで基礎も作れる可能性が出てきた。
施工コストや工期の大幅な短縮、自由曲面を使った斬新な住宅という期待もあり、部分的な導入は可能なことから今後の3Dプリンター利用建築の取り組みに目が離せない。(編集担当:久保田雄城)