大企業や行政で不祥事が相次いでいる。これらは皆、組織のガバナンスを問われる想定外の不祥事であり、リーダーの資質が問われる事件であるとも言える。グローバリゼーションや第四次産業革命の中、経営環境は大局的に変化している。リーダーの資質が組織の未来を決定づける時代であると言える。多くの人がリーダーシップ論に強い関心を払っている時代であろう。
エン・ジャパンが自社の運営するサイト「ミドルの転職」を利用している35歳以上のユーザー1292人を対象に「理想の経営者」についてアンケート調査を実施した。「現在の職場の経営者に満足しているか」という問いに対して「満足している」と回答している者は19%にとどまった。
一方、「理想の経営者」について具体的人物をあげてもらったところ、第1位は松下幸之助、第2位が孫正義、第3位は本田宗一郎、第4位は稲盛和夫、第5位は柳井正という順位であった。未だ松下幸之助の人気は健在だ。
その理由を見ると、「自分の信念においてビジョンを明確にしているところ」、「社員を家族として大事にするところ。徹底的に現場主義な点」、「人格・実績を兼ね備え、後世にも影響を与えた」などとなっている。
そこで、理想の経営者として「経営者に求めることは何か」という質問をしたところ、「会社を導く理念・ビジョン」が59%と最も多く、次いで「実行力」が31%、「本質を見抜く力」26%、「戦略性」25%、「組織マネジメント力」22%、「人材育成力」21%、「個人としての謙虚さ」20%の順となっている。
逆に「残念な経営者」としては、「会社を導く理念・ビジョンがない」が45%で圧倒的に多く、「言っていることとやっていることが矛盾している」が35%、「倫理観がない」が27%などとなっている。
中堅以上のビジネスマンの8割が現在の経営者に満足していないと回答していることは、現在の混乱した組織社会を映し出しているものと言える。多くのビジネスマンが経営者に望んでいることは「組織を導く理念やビジョン」であり、不透明な時代であるからこそ、組織のメンバーが共有しうる未来地図を明確に示す能力であると言える。
政治も産業も大きく変動する環境の中で明確な未来のグランドデザインを描ききれていない状況だ。進むべき方向を明確に示すリーダーが不在の状況で、人々が戸惑っている日本の現況をこの調査結果は映し出していると言えよう。(編集担当:久保田雄城)