東京商工リサーチによると、2016年(1-12月)に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は、 57社(58件)で、2008年以降で最多を記録した。これまで最多だった前年の52社(53件)を5社、9.6%上回った。
調査を開始した2008年の25社(25件)に比べ、2016年は2.2倍増と急増しているが、なかでも東証一部上場の大企業の増加ぶりが目立つ。急増の背景には、コンプライアンスの欠如、知識の不足、従業員への過度なノルマ追求、そして監査体制の強化などがある。また、厳格な運用が求められる企業会計についていけず、処理の誤謬が生じたケースも散見された。過度なノルマや業績至上主義、適正会計に対するコンプライアンス意識の欠如など、健全な会計意識の定着遅れが温床となり、不適切会計は高止まりしている。
2016年の不適切会計の開示企業は57社(58件)で、前年の52社(53件)を社数で5社、9.6%、件数で5件、9.4%上回った。社数は2013年から4年連続で増加をたどり、社数・件数とも調査を開始した2008年以降の最多記録を更新した。
2015年5月に東芝の不適切会計が発覚し、開示資料の信頼性確保や企業のガバナンス強化の取り組みを求める声が高まった。金融庁と東京証券取引所は上場企業が守るべき行動規範の策定を進め、2015年6月に「コーポレートガバナンス・コード」を公表し、関係各所の体制強化を求めている。
一方、企業側は株主が求める業績、利益の拡大を追求し、目標達成に向けて設定したノルマの進捗管理を厳しく行っている。現実味を欠いた目標設定や進捗管理が独り歩きした結果、コンプライアンス違反に繋がるケースも目立つ。
また、時価会計や連結会計などに厳格な会計手続きの知識が求められ、現場で処理についていけず会計処理手続きの認識の誤りも生じている。企業の人手不足が広がるなかで現場の負担は高まり、不適切会計を増加させる側面になっている可能性も危惧される。
内容別では、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が25件(構成比43.1%)で最多だった。次いで、「売上の過大計上」や「費用の繰り延べ」など、営業ノルマ達成を推測させる「粉飾」が24件(構成比41.4%)だった。
「粉飾」では、子会社・関係会社間での売上の過大計上や売上原価の先送りなど、業績目標を達成するために意図的に操作されたケースもある。また、子会社・関係会社の役員や従業員による「会社資金の私的流用」、「架空出張費による着服」など、個人の不祥事もあり、子会社・関連会社への厳格な監査を求めた結果も表れているとしている。
発生当事者別でみると、開示当事者の「会社」が27社(構成比47.4%)、27件(同46.6%)で最も多かった。内容では、開示当事者が会計処理手続きの誤りや事業部門で売上の前倒し計上、売上原価の先送りをしたケースなどがあった。「子会社・関係会社」は、24社(構成比42.1%)、25件(同43.1%)。「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると51社(52件)で、社数全体の89.5%、件数では89.7%を占めた。(編集担当:慶尾六郎)