ゴーン氏の発言で波紋が拡がる。日産、ルノーに吸収合併されるのか?

2018年04月22日 14:22

Nissan CEO Carlos Ghosn at Nissan Headquarters.

仏ルノー社の会長職続投が決まったカルロス・ゴーン氏の「ルノー、日産の合併も……」に発言が波紋を──

 日産自動車と仏ルノーのアライアンス関係に変化が起きそうだ。アライアンス(連合)から企業合併に発展する可能性を否定できない状況になった。日産&ルノー両社の会長を兼務するカルロス・ゴーン氏への、日本経済新聞のインタビュー記事が波紋を拡げているのである。

 このなかでゴーン氏は、両社の資本関係を見直す考えを示し、「あらゆる選択肢についてオープンに考えている」と述べた。

 ルノーの最大株主である仏政府は、ルノーと日産の経営統合を求めており、ゴーン氏は現在の相互出資関係を改めることを検討し、2022年までに新体制に移行する考えを明確にした。

 仏政府は6月に開催するルノー社の株主総会に向けてゴーン氏を会長兼最高経営責任者(CEO)として留任・続投させことを発表している。その条件として、日産とルノーを“不可逆的な”(後戻りできない)関係に改めるよう求めているとされる。確かにゴーン氏は「仏政府は大株主として、ルノー日産アライアンスに意見を述べている」と発言している。

 両社の関係は1999年に始まった。経営危機に陥った日産を救済する恰好で、ルノーが日産に出資した。現在はルノーが日産に43.4%、日産もルノーに15%を出資している。

 仏政府は自国産業の保護育成のため、従前から日産をルノー支配下に置きたいとの姿勢をみせてきた。2014年4月に株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与えるフロランジュ法を制定し、ルノーを通じた日産への経営干渉の構えをみせたことでも分かる。

 しかしながら、2015年末に、仏政府は日産の経営に関与しないと合意した。その際「日産の経営判断に“不当な干渉を受けた”場合、ルノーへの出資を引き上げる権利を持つ」と確認している。加えて、仮に日産がルノー株を25%以上まで買い増せば日本の会社法によりルノーが持つ日産株の議決権が消滅する。

 ところが、今回のインタビューでゴーン氏は、日産とルノーの資本見直しも検討しているかとの問いに「そのとおりだ」と答えたという。これまでゴーン氏は両社の関係はアライアンスであり独立した企業として独自に経営を行なうとしてきた。ところが、2022年までルノー社の会長留任が決まったゴーン氏が、初めて資本関係の見直しを明言したのである。日産・ルノーを巡っては、仏政府がゴーン氏に圧力をかけ、両社の経営統合を迫っているとみられてもおかしくない状況を示している。

 具体的に、ゴーン氏は、インタビューのなかで「合併を含む、すべての選択肢に対してオープンでどれも排除しない。さまざまな組織の意向を反映する答えを見つける必要がある」と説明している。

 どうやら、仏政府はゴーン氏が退任する2022年以降、日産との関係を維持できなくなると不安視しているらしく、仏政府の言う「ルノー日産アライアンスの(ゴーン氏)個人に依存しているガバナンスを変える必要がある」という指摘が大きな圧力となっている。

 日産ルノーアライアンスは部品調達や生産、開発の機能を統合するなど、運営面で協力してきた。シナジー効果を追求するためだ。しかし、ガバナンス(企業統治)については、それぞれにリーダーがおり、変更の必要はなく、これまで触れてこなかった。

 今回、ゴーン氏は、自身に退任後も「日産・ルノーの協力関係を維持するために企業合併を含めた見直しに取り組む必要がある」と強調したのである。(編集担当:吉田恒)