少子高齢化が進み、どの企業でも人材の確保に躍起になっている反面、定年を迎えた人をその後も継続して雇用するかどうかの判断についても慎重な対応が求められている。2013年に施行された改正高年者雇用安定法は、まさにこうした高齢労働者の働き方について定めた法律であり、この法律に基づいて企業も高年齢者を雇用している。この法律では、定年の引き上げた継続雇用制度の導入などといった内容が規定されており、企業にとっても人材確保の一環として活用されるものとなっている。
少子化の影響から新卒の採用状況については売り手市場とも言われており、優秀な人材をどのように採用するか、という点はどの企業でも大きな課題となっている。若年層を採用して企業そのものの若返りを図りたいものの、そもそも若い人を採用することそのものが難しい現状では、現在所属する社員に対してもできるだけ長く働いてほしいと考えるところも少なくない。先述の改正高年者雇用安定法は、こうした企業側のニーズに対して定年の引き上げなどを定めたものだが、実際に高年齢者を雇用している企業側の現状を見ると、必ずしも企業側のニーズと合致しているわけではないことがわかる。
求人サイトなどを手がけるエン・ジャパンは、高年齢者雇用についてのアンケートを実施、およそ250社から回答を得たが、そのうち72%が高年齢者雇用安定法に基づいた制度の導入を行っている。さらに、この制度を導入した企業のうち84%が高年齢者の継続雇用に対して「給与を変更する」といった措置をとっていることがわかった。雇用形態そのものを変更するという回答の企業も70%を占めており、待遇や雇用形態を変えずに雇用している企業はわずかに13%にとどまった。
少子高齢化による人材不足はどの業界であっても同じだが、それでもやはり業種によっては慢性的な人材不足に陥っているところも多い。たとえば設備設計業界は常に人が足りない状態が続いており、高年齢者であっても問題なく業務遂行が可能とするところもある。その反面、同じく人材不足が続くサービス業の場合は世代交代を積極的に進めたいという考えから、高年齢者の継続雇用については消極的だ。人手不足だからといって、誰でも良いというわけでは決してなく、法律で定められているためにやむなく雇用しているというところも少なくない。少子高齢化だからといって、いつまでも高年齢者の労働力に頼るということに対してのジレンマは、どの企業でも変わらない課題といえるだろう。(編集担当:久保田雄城)