社会の高齢化に伴い、ミドル世代やシニア世代の活躍の場は増えており、その活性化と人材活用は今後一層重要となる事が予想される。?世代などの呼称の線引きは曖昧なところがあるが、本稿では概ね40代までをミドル世代、60代以降になるとシニア世代と呼んでいる(参考リクルート)。2013年4月1日から高年齢者雇用安定法が施行され、それまで努力義務であった65歳までの高年齢者雇用確保措置が「義務」に格上げされ、継続雇用の希望者全員が雇用延長制度を利用出来るようになった。
雇用延長制度には、再雇用制度と勤務延長制度があり、高年齢者が老齢厚生年金の報酬比例部分を受給し始めるまで、継続雇用制度が必要とされている。一般企業の場合、再雇用が最も多いと思われるが、その場合従業員はいったん退職し、嘱託などの形でそのまま会社に残る。賃金は現役時の6~7割になり、ハーフタイム勤務など、勤務体系も変わってくる。
人生100年時代と言われるなか、当事者である労働者は雇用延長に対しどのような意識でいるのか。エン・ジャパンが運営する転職サイト『ミドルの転職』では「雇用延長制度」についてアンケートを行なった。35歳以上のユーザーに「『雇用延長制度』についてどう思いますか?」と質問したところ、89%の方が「賛成」と回答。何歳まで働くことを想定しているか伺ったところ、48%の方が「70代以上」と回答した。「高齢者」の定義を、現在の「65歳以上」から新しく「75歳以上」へ見直す議論も注目を浴びている昨今、人生における労働期間の延長を前向きに捉える傾向にあるようだ。
大王製紙が行った「ミドル」から「シニア」の意識の変化における調査でも、まだまだ働く人も多い50代で7割近くが気持ちも体も「ミドル」と回答(気持ち:65%、体:68%)。60代においては、気持ちの「ミドル」が約半数(47%)と、まだまだ気持ちの上では若い60代が多いことがわかった。調査結果から、どの年代も「気持ち」の上ではおよそ10歳前後自分を若く見積もっており、中高年世代のバイタリティの高さが伺える。
近年、企業におけるミドル世代の採用は増加傾向にあるようで、エン・ジャパンが運営する『エン 人事のミカタ』のアンケートによると8割の企業が3年以内にミドル人材を採用。4割の企業が3年前よりもミドルの採用数を増やしたと回答している。ミドル人材の採用目的としては、「人員確保のため、若手採用ポジションの年齢上限緩和」、「社内体制の再構築」、「マネジメント人材不足を埋める」などが挙がった。ミドル世代の経験を基にした高い「専門性」や「自社にない能力・経験」、「マネジメント力」への需要が高い一方、「自分のやり方、これまでのやり方に固執する」「給与が高い」、「体力的に場合」などには採用を躊躇する傾向もあった。
報酬面や成長率(今後の伸びしろ)など採用リスクは低いとは言えないが、86%の企業が「今後ミドル人材を採用したい」と回答している。リスクを犯してでもミドル世代の需要が高いということはそれだけ即戦力が必要ということだろう。人手不足が叫ばれているが、企業としては猫の手も借りたい、とはならず一定の実力と経験、バイタリティを備えた人材の不足に悩んでいるようだ。(編集担当:久保田雄城)