同一労働同一賃金で司法判断根拠規定整備けん制

2016年07月20日 20:25

 日本経済団体連合会が「同一労働同一賃金の実現に向けて」と題した提言を19日まとめた。「欧州型同一労働同一賃金は困難」とし、政府が司法判断の根拠規定を整備する姿勢をけん制する狙いがみえる。

 提言は「職務内容が同一または同等の労働者に同一賃金を支払うことを原則とする(職務給を前提とする)欧州型同一労働同一賃金は困難」とし「労働契約法やパート法の基本的考えを維持すべき」としている。

 経団連は労働条件を定める法制を「不合理な労働条件を禁止する」法制(現行の労働契約法やパート法など)から「労働条件は合理的なものでなければならないとする」法制(欧州の法制)に変更した場合、「企業は正規と非正規の労働条件の相違について、合理的理由を厳格に立証しなければならなくなる」と政府が司法判断の根拠規定を整備するとしていることをけん制している。

 理由づけには「合理的要件に(法改正)した場合、企業は紛争回避のために正規・非正規の仕事を明確にわけることが想定され、正規登用の機会の減少や高齢者再雇用後の活躍が阻害されるおそれがある」と理由づけている。

 そのうえで、3つの課題解消に向け取り組むべきとし(1)正規と非正規の人事賃金制度が異なっているので、非正規従業員が待遇差の理由を理解しづらい。理由(根拠)を分かり易くする。

また(2)非正規従業員が司法に救済を求めにくい(3)非正規従業員のキャリアアップや能力開発の機会が限定されやすい点の解消をはかるべきとしている。

 日本型同一労働同一賃金について「職務内容、仕事・役割・貢献度の発揮期待(人材活用の仕方)など、様々な要素を総合的に勘案し、自社にとって同一労働とみなされる場合に同一賃金を支払うことを基本とする。ガイドラインの策定、法制度の見直し、簡易な救済制度の利活用などにより現行法の実効性を高める。非正規の正規化や教育訓練の充実など非正規従業員の総合的な処遇改善を推進することで、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保につながる」としている。

 待遇面で企業の自主点検例では「役職手当について、正規・非正規がまったく同じ役職、人材活用であるのもかかわらず、非正規というだけで手当てを支給しない」。「習熟度が高まったにもかかわらず、時給の引き上げなど処遇改善を行わない」「賞与・一時金について、非正規の理由だけで一切支給しない」などをあげた。

 また、見直しや代替措置を検討することが特に望まれるケースとして「安全管理、通勤手当、食堂や休憩室の利用などで、正規と差を設けること」などをあげた。(編集担当:森高龍二)