UEFAチャンピオンズリーグは、いよいよ決勝トーナメントに突入した。ベスト16でいきなり、レアル・マドリードとマンチェスタ・ユナイテッドという優勝候補とされるビッグクラブの対決があり注目を集めている。今月14日に行われたレアル・マドリードホームスタジオでもあるエスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウでの一戦には日本代表の香川真司も先発出場したことから、深夜にも関わらず、テレビの前に釘付けになっていた日本のサッカーファンも多かっただろう。
毎年、ヨーロッパの主要リーグの始まる時期でもある9月から翌年5月にかけて激戦を繰り広げるUEFAチャンピオンズリーグ(以下UCL)は、ヨーロッパのみならず、世界中で注目されているスポーツの一大イベントだ。100年を超える伝統を持ち、世界中の一流選手が集まってくるクラブが、リーグや地域の誇りをかけて真剣勝負するこの大会は、高い技術と新しい戦術、そして新たなスターが生まれる舞台として、4年に一度、世界の国の代表同士が戦うW杯とはまた違った見所がある。
そんなビッグイベントだけに動くお金に額も桁違いだ。昨年タイトルを初めて獲得したプレミアリーグの名門チェルシーは、UEFAから5993万5000ユーロ(約58億円)の賞金を獲得したとされている。UCLの下のカテゴリーとされるUEFAヨーロッパリーグで、2011—12シーズンでチャンピンとなったアトレティコ・マドリーの分配金が1050万ユーロ(約10億円)で、さらには2010年の南アフリカW杯で優勝したスペインが手にした賞金は3100万USドル(約27億6000万円)だったことに比べても、その額の高さには驚かされる。
UCLは、まさしくプロサッカー選手にとっては最高の舞台と言えるだろう。そんな舞台でプレーすることを目的に、各国の若い才能がUCL出場可能なヨーロッパ各地クラブチームに集まってくる。そして大会で活躍を見せることができれば、ビッグクラブへの移籍も夢ではない。UEFAチャンピオンズリーグは、名門ビッグクラブのリーグ間の垣根を越えたプライド同士のぶつかり合いでもあり、さらなるステップアップを目指す若手選手のアピールの舞台でもあるのだ。
アジアでも年に一度、AFCが主催するアジアチャンピオンズリーグ(略称はACL)が開催されている。こちらもアジアのクラブチームにとっては最も権威のある大会だ。今の形式になってからは、まだ10年程と歴史が浅く、ユーロッパに比べると参加条件を満たすクラブチームの数が少なかったが、徐々に出場枠も増え、盛り上がりを見せ始めている。しかし、ヨーロッパと比べアジアは広いので、ホーム&アウェイの対戦方式のため、選手たちの移動も大変で、しかも、日本など東アジアと中東地域では気候やグランド状況も全く異なるので、試合で最高のパフォーマンスを発揮できないというケースも出てくるなど課題も多い。
だがヨーロッパとアジアのサッカーの違いで最も大きいのは、やはりその築き上げてきた歴史にあるだろう。UCLがなぜこれほどまでに人々を歓喜させ、惹き付けてしまうのか。その答えは、100年以上も前から地元のサッカークラブを応援することが生活の一部となっているヨーロッパの市民文化と、その歴史の中で繰り広げられてきた国や地域間の争い事によって生じた確執の残像が、因縁という形となってヨーロッパサッカーにおける最高の舞台に投影されるからではないだろうか。(編集担当:北尾準)