多くの日系企業にとって、ASEAN諸国は今、生産などの拠点としてはもちろん、市場としても非常に重要な存在になっている。中でも、7%の高成長率を維持しているカンボジアは注目されており、近年は中国やタイの人件費上昇などの影響もあって、日系企業の進出が目立ってきた。また、近年の経済成長を背景に、首都であるプノンペンでは高級品など購買力の高い層が増えつつあり、販売拠点としても期待が高まっている。
しかし、一般的な日本人のカンボジアに対する興味は、まだそれほど高いとはいえない。カンボジアといえば、まず頭に思い浮かぶのが世界遺産のアンコールワットだろう。でも、それ以上を聞かれると首を傾げてしまう人が多いのではないだろうか。
日本とカンボジアの外交は1953年に始まり、今年はちょうど65周年を迎える節目の年だ。実はかなりの親日国で、通貨である500リエル紙幣にはなんと、日本の国旗である日の丸がデザインされている。これは、メコン川沿いの国道1号線に2015年に開通した通称「つばさ橋」が、日本の支援によって完成したことを記念して発行されたものだ。以前は、大動脈である幹線道路がメコン川で分断されていて、フェリーでしか行き来が出来なかった。しかも、夜間は運休しているために川を渡る術がなく、流通のネックとなっていたのだ。この橋が開通したことで、カンボジアだけでなく、ベトナムやタイへの流通も改善され、メコン地域の経済成長を支える、文字通り大きな懸け橋となっている。
民間レベルでも、カンボジアに支援を行っている企業は多い。
例えば、ミツバチ産品の製造・販売で知られる株式会社山田養蜂場は、脚本家の小山内美江子氏が設立した認定NPO法人 JHP・学校をつくる会(以下JHP)と協力して、10年に亘って小学校を寄贈する教育支援活動を行っている。
この活動は、2008年8月に同国のバッタンバン州トゥールプルム村にトゥールプルム小学校を寄贈したのを皮切りに、以来、年に一校のペースで小学校を建設し、現地の教育環境の改善に取り組んでいる。今年も5月にバッタンバン州トゥールプルム村のタックラー小学校に、新たな校舎「山田養蜂場ミツバチ第十小学校」を寄贈している。
カンボジアは、まだまだ発展途上国だ。経済成長率が安定しているといっても、一人当たりGDPではASEAN諸国の中でも最低水準。しかしそれだけに、これからの成長が期待できる国ともいえる。
今年6月、カンボジア政府はプノンペンとプレアシハヌーク州を結ぶ、全長190キロメートルの高速道路の建設を年内に開始すると発表した。約20億ドルの予算と4年の歳月をかけて建設されるこの道路が開通すれば、同国初の高速道路の誕生となり、カンボジアの経済は一気に加速するだろう。また、プノンペンと、ベトナム国境を結ぶ別の高速道路プロジェクトも予備調査が始まっている。
カンボジアがこの先も順調に発展していけば、日本経済にもたらす影響も大きくなるのは間違いないだろう。(編集担当:藤原伊織)