相続分野の規定を見直す民法改正案が先月19日、衆議院本会議で可決され参議院に送付された。民法の相続分野の規定が見直されるのは約40年ぶりとなる。政府は今国会での成立を目指す。
民法改正案の大きな特徴は被相続人の配偶者の優遇措置が拡充されている点だ。被相続人の死後、配偶者が慣れ親しんだ自宅に住み続けられるように配偶者居住権の創設が柱となっている。現状の制度では被相続人の配偶者が自宅の所有権を相続すれば今まで通り自宅に住み続けることは可能だ。しかし自宅の所有権を相続した分、遺産分割によって得られる預貯金などが少なくなってしまうことが問題視されてきた。自宅の所有権を相続したために、その後の生活が苦しくなってしまい、結局自宅を手放さざるを得なくなってしまうケースが相次いでいたからだ。今回の改正案により、被相続人の死後も配偶者が自宅に住み続けることができ、かつ生活資金も確保できるようになった。
さらに別の大きなポイントは、結婚期間20年以上の夫婦に限って、住宅の生前贈与や遺贈が特別受益の対象外となるという点だ。住宅の生前贈与などが特別受益となる現状では、被相続人の死後の遺産分割協議において被相続人の配偶者が不利になるという状況が生まれてきた。加えて被相続人の死後、配偶者が当面の生活資金や葬儀代などを被相続人の預貯金から引き出すことも可能になる。現状では遺産は相続人が共有している状態であるため遺産分割協議前の引き出しはできないとされているが、民法改正によって配偶者の不利益を最小限に抑えるための措置が講じられたことになる。
民法改正によって相続人ではない親族が金銭請求できるようになったのも民法改正の重要なポイントだ。被相続人の介護や看病で貢献した場合、親族は相続人でなくても金銭請求ができる。ただしこれは親族に限られ、使用人などは対象とならない。今回の民法改正によって特に被相続人の配偶者が優遇されることが明らかになった。今回にとどまらず、今後も相続による問題を減らすため、さらに生活に困窮する相続人が出ないようにするため、さらなる制度の改正が必要になるだろう。(編集担当:久保田雄城)