人口減に歯止めをかけようと、各自治体が子どもの医療費助成でしのぎを削っている。医療費の負担増が議論される中で、子どもの医療費助成によって少子化を食い止めたいという国と地方自治体の願いが透けて見える。
一言で子どもの医療費助成と言っても、自治体によって大きな差がある。主にこれは自治体ごとの財政力に大きく依存している。大きく異なるポイントの一つは助成を受けられる子どもの年齢だ。自治体の中でもっとも多いのは小学校就学前までの助成だが、15歳まで、もしくは12歳まで助成するという自治体も少なくない。自治体によっては保護者に対する一部負担を求めるところもあり、子育て世代にとっては住んでいるところによって医療費の負担が大きく変わるのが現状だ。
これまでは現物給付による自治体の助成に関しては国によるペナルティがあったため自治体も医療費助成に及び腰だった。現物給付を採用している自治体に対して、国は過剰受診を防ぐために国民健康保険の療養費等国庫負担金を減額する方針であったため、医療費助成制度の充実が遅れてきた。しかし全国知事会などからの廃止要請により、療養費等国庫負担金が減額されないことになり、さらに自治体同士の子どもに対する医療費助成の競争が激化すると考えられる。どの自治体も子育て支援に対する予算を増額することができるようになることで、人口の確保を目的としたせめぎ合いが続くことは必至だ。
こうした動きは子育て世代にとってはうれしいニュースである反面、自治体にとっては深刻な問題もはらんでいる。競争に敗れるであろう財源の少ない自治体は助成金額が少なく、人口減がさらに加速する恐れもある。住んでいる地域によって子どもにかかる医療費が変わるのであれば、不公平を感じる住民も増えていくことが予想される。今後は自治体のみならず、国と自治体が協力しながら育児世代に対する公平感のある支援を検討してく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)