飲料業界の2011年、売上状況と社会貢献

2012年01月23日 11:00

 2012年も約3週間が過ぎ、飲料メーカー各社が昨年12月の売上若しくは2011年の年間売上を発表している。昨年は3.11の東日本大震災により大きな被害を受けたものの、予想を上回る復旧スピードやミネラルウォーターの需要増大などにより、富士経済が発表した2011年見込みである前年比98.5%と同程度での着地となったようだ。

 アサヒ飲料は、9年連続の販売数量増で過去最高を更新。基幹ブランドである「十六茶」が累計前年比112%で、2年連続の2桁増。また「ワンダ」ブランドがキャンペーンの効果もあって累計前年比108%となっている。さらにミネラルウォーター系は累計前年比178%と大幅増となった。キリンビバレッジも「午後の紅茶」が2年連続で過去最高の販売数量となり、「ファイア」は新商品投入の効果などにより前年比101%、「アルカリイオンの水」が前年比113%となるなど、最終的には全体で前年比100%程度となっている。その他、伊藤園は機能性飲料で前年比119.5%、日本茶飲料が前年比101.7%(4月から12月の累計実績)、ダイドードリンコも茶系飲料で前期比103.3%、機能性飲料で102.1%(2月から12月の累計販売数量)で推移しており、各社ともに震災による被害と需要が均衡した様相となっている。

 また、近年日本でも広がりつつあるCSR(企業の社会的責任)活動であるが、飲料事業は日常生活に密接する事業であり、水が重要な原料であることなどから、業界各社は比較的早期から積極的に活動を実施してきた。

 「水と生きる」を掲げているサントリーグループは1991年に「環境室」と「環境委員会」を設置し、2010年にはグループ全体で事業とエコロジーを一体として推進していくことを目的に、サントリーホールディングス内に「エコ戦略本部」を発足させている。またコカコーラウエストも、「お客さま満足、社員満足、品質保証、コンプライアンス、リスク管理、 環境推進」の6つを重点項目としたCSR活動を実施しており、地域美化活動や空容器・自動販売機のリサイクル、販売時でなく飲料時での品質管理などの活動を行っている。

 このように各社が積極的に取り組んでいるCSR活動・環境活動ではあるが、2011年は、自動販売機を主とする企業の取り組みを再確認する年となった。東日本大震災の影響による電力供給量の低下により、24時間稼働している自動販売機への風当たりが強くなり、一時は「自動販売機不要論」も飛び交った。各社それまでも自動販売機の低消費電力化を進めてはいたものの、その活動自体や自動販売機そのものの有用性、環境活動以外の各種取り組みが、あまり世間に認知されていなかったのかもしれない。例えば売上高の約9割を自動販売機が占めるダイドードリンコは、省エネルギーの自動販売機への転換だけでなく、収益金の一部が寄付される「緑の募金自販機」や「盲導犬育成募金自販機」、「ギャラクシー募金自販機」、「赤い羽根募金自販機」などの社会貢献型自販機の設置も進めている。さらに、停電時にも商品搬出可能な災害救援ベンダーの導入や、全国各地の地方自治体との災害協定を締結。東日本大震災発生時には、協力地域内にある物流拠点から在庫商品をいち早く提供したほか、多くの災害救援ベンダーも稼動し、飲料の無償提供が行われたようだ。

 日頃何気なく目にする自動販売機ではあるが、それらを意識して見ることはあまりないだろう。2011年は、販売拠点としての自動販売機の役割だけでなく、様々な社会貢献を担うツールとしての自動販売機の役割について、あらためて認識した年といえるかもしれない。